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皆さんの身近な困りごとや疑問をSNSで募集中。「#N4U」取材班が深掘りします。

 わずらわしくて、できれば隠したい生理。タブー視する空気は依然強いが、世界各地で生理についてオープンに考えようという動きが生まれている。男女がともに社会で活躍するため、生理ときちんと向き合おう――。「#ニュース4U」取材班が海外に飛び、そんな動きを追った。

インドネシア「最貧」の島に布ナプキン普及

 取材班の女性記者が向かったのは、インドネシア。同国を拠点とするNPO「コペルニク」を訪れた。

 コペルニクの活動地域の一つが東ヌサトゥンガラ州にあるフローレス島。同国のなかでももっとも貧しい地域の一つだ。島のルテンという地域で、2017年から中学校や集会所で女子学生や女性を集めて、布製のナプキンの説明会を何度も開いてきた。女性スタッフが実物を手に、生理と身体のメカニズムやナプキンの使い方を説明する。生理にまつわる迷信についても取り上げる。

 同国の一部では生理は現在でもタブー視され、月経中の女性は料理を禁じられたり、洗髪すらも出来なかったりすることもあるからだ。また、生理用品は地域住民にとっては高価で、入手しにくい。そこで使い古した布なども使ってきた。衛生的に問題があるばかりでなく、吸収力もよくないため、外出しづらくなる。

 そこで布製ナプキンを配布することを発案。カナダ政府や日本の大和証券グループの資金を受け、製品を開発し、女性たちに教育の一環として無料配布してきた。開発にあたっては試作をしては使ってもらい、肌触りや吸収力など使い心地の感想を聞いて改良するというプロセスを重ねた。

 布ナプキンにしたのは、肌触りの良さといった使い心地に加え、紙やプラスチックのゴミを減らすという目的もある。インドネシアではゴミが深刻な環境問題となっているが、コペルニクによれば、もし女性が一生使い捨ての生理用品を使ったとすると、1人当たり175キロのゴミが発生するという。

 これまでに6千人近くの女性に、合計で3万個近くの製品を無料配布や比較的安価で販売をしてきた。ナプキン製造や販売が地域の女性たちの仕事作りにもなっている。12人の女性が製造し、150人が販売に携わっているという。

 無料配布は大好評だった。そこでプロジェクトを続けるべく、化粧品製造販売の「ザ・ボディショップ」の協力を得て寄付も集めている。

 実はコペルニクの創業者兼代表は日本人男性だ。その中村俊裕さん(45)はこのプロジェクトの意義を「生理の問題は、タブーから環境まで幅広い。男女の違いを超えて、みんなが活躍できる社会をつくりたい」と語る。

 ここまで読んで、今年日本でも公開された映画「パッドマン 5億人の女性を救った男」を想起した人もいるかもしれない。実在のインド人男性アルナーチャラム・ムルガナンダムさんをモデルにした映画だ。

 インドでもやはり生理はタブーで、生理用品は高価だった。結婚して初めてその実態を知ったムルガナンダムさんは試行錯誤の末、安価な簡易ナプキン製造機を開発し、女性たちに販売。多くの女性たちが地域でナプキンの製造や販売を出来るようにして、意識改革をも促した。

【動画】生理って「隠す?」「隠さない?」 海外では=半田尚子撮影

米国では多くの州でぜいたく品

 生理がタブー、スティグマなのは先進国も変わらない。米国・ハーバード大学に通うナディア・オカモトさん(21)は、ホームレスの女性に話しかけたことがきっかけで生理の問題に取り組み始めた。

 高校生の時に、学校の通学途中のバス停留所で見かけて気になっていたホームレス女性に話しかけ、友人になった。彼女たちの一番の困りごとが「生理」(period)だったのだ。しかし、恥ずかしくてホームレス支援者にも口に出せない。そのため生理用品が買えず、トイレットペーパーや靴下などで代用していた。

 いろいろと調べてみると、米国では多くの州で生理用品がぜいたく品と見なされ、「タンポンタックス」と言われる税金がかかることなどがわかってきた。

 そこでNPO「PERIOD」を設立し、ナプキンやタンポンなどの生理用品を買って小分けのパッケージにして配り始めた。「だって、NPOって社会に良いことをするための組織って聞いたから(笑)」

 デジタルネイティブ世代だけあって、SNSなどでどんどん宣伝して寄付を募り、活動を広げていった。楽しくにぎやかに仲間を増やし、各地に「支部」を作ろう、と呼びかけたのだ。生理用品メーカーが現物の寄付もしてくれるようになった。

NPOが非課税や無償支給提言「もっとオープンに」

 活動が軌道にのってくると、タンポンタックスをなくすなどの政策提言を始めた。中学校や高校で生理用品を無償支給することも訴えた。

 「だって、生理って女性の困難の問題でしょう?だから、男女平等を考えるなら、女性の生理の負担を軽減すべきだと思って。少女や女性が生理痛に苦しむことで教育の機会を逃したり、経済活動や政治的な活動に参加できなかったりするのだから。だから、オープンに生理の問題を語り合うべきだと思う」

 2017年、オカモトさんは地元マサチューセッツ州のケンブリッジ市議に立候補する。政策を政治家として進めたかったからだ。結果は落選。「でも、私が立候補したせいで、多くの若者が投票に行ったんです」と彼女は言う。

 今では活動の柱は三つ。ホームレス女性の生理用品の現物支給と、タンポンタックス廃止と学校での生理用品配布を求める政策提言、それから教育だ。活動は米国全州、そして国外にもドイツやフランスなどのヨーロッパ、マレーシアや中国などアジア、ケニアやジンバブエなど30カ国以上に広がっている。

 成果も確実に出しており、これまでに生理用品は80万パックを支給し、ポートランドには生理用品の倉庫が五つあるのだという。政策提言でも、ニューヨークやイリノイ、コネティカット、フロリダ、カリフォルニアなどですでにタンポンタックスは廃止された。

 もちろん、彼女たちの活動だけではなく、ほかにも多くの女性や大人たちが活動をしたゆえの成果だ。だが、若者たちのデモをし、署名活動をし、政治家に会いに行くという行動が政策を後押し、変化への環境を作り出したのは間違いないだろう。ここでは生理が政治へと結びついたのだ。

男女兼用トイレに堂々とナプキン

 米国ではこんなトイレも見つけた。男性と女性の絵文字に、男女が半々で組み合わさった絵文字と、車いすの絵文字。その下に「ALL GENDER  RESTROOM」の表示が。男女誰でも使える、という意味だ。

 オレゴン州ポートランドで、アジア太平洋系の移民支援に取り組むNPO「Asian Pacific Network of Oregon」(APANO)のオフィス内にあるトイレだ。

 トイレの中に入ると、ナプキンとタンポンが堂々と置いてあった。自由に使っていいのだという。日本人の私は最初これを見たときにどぎまぎ戸惑ってしまった。そこでスタッフのみんなに聞いてみた。

 「あのトイレの生理用品、どう思う?恥ずかしくないですか?」

 20代の女性スタッフは私の問いに「え?何で恥ずかしいってどういう意味?突然生理になっちゃったりすることもあるから、すごく便利」と屈託ない。「だって男性もあのトイレ、使うでしょ」というと、「だから?」。

 30代の男性スタッフは「結婚しているから、妻の大変さはわかるからね。何の違和感もないよ」とのことだった。しかし、米国でも地域差はあるようで、ノースカロライナ出身の女性スタッフは「私自身は便利だと思うけど、実家の地域だと男女一緒のトイレやましてその中に生理用品があるなんて考えられないと思う」。

ケニア、制服に「しみ」教師の言動を苦に自殺…

 グローバルに子ども、特に女の子や女性を取り巻く貧困削減に取り組む国際NGO「プラン・インターナショナル」は、生理の問題解決に注力している。

 「生理は女性なら誰でも経験する普遍的な自分ごと化しやすい問題。貧困地域では生理用品が買えないなど、深刻な課題が顕著に表れます。女性に安心をあたえ、ひいては男女平等につながる重要な課題です。けれども、食糧などに比べて、どうしても後回しにされがちな支援」(広報担当の平田泉さん)だからだ。

 途上国だけでなくイギリスなど先進国でも取り組みを行っている。アフリカ・ウガンダの難民居住地や中米グアテマラなどで生理用品の配布を行ってきた。

 プランによれば、ケニアで今年の9月、生理で制服にしみをつけてしまった14歳の女生徒が、学校の教師に「汚い」などと言われ、教室を出て行くよう命じられたことを苦に自殺したという。このような悲劇を繰り返さないためにはどうしたらいいのか。

英国「たやすく話そう」生理を絵文字化

 イギリスのプランが主導してこの10月に誕生したばかりなのが、アイフォーン(iOS13.2バージョン)用の生理の絵文字だ。イギリスでもやはり生理はタブーとされ、気軽に話せない雰囲気なのだという。プランが14歳から21歳の女性1千人を対象にした調査によれば、学校の先生やスタッフに安心して生理のことを話せると答えたのは約20%に過ぎなかった。

 また、18~34歳の女性を対象にした別の調査では、約半数が「絵文字は生理の問題をたやすく話せるために役立つ」と答えた。そこでプランで五つの絵文字のデザインを考案し、オンラインで投票を募った。5万5千人が投票に参加し、生理用下着のデザインが一位に選ばれた。だがこのデザインは絵文字を管轄する団体からは却下されてしまった。その後交渉の末、二番目に人気だったデザインが採用された。

 経血そのものがデザインされており、生々しすぎると感じてしまう筆者は旧世代……。この意識こそ解放しなければ。あなたは、この絵文字を使って生理のことを気軽に話せますか?(秋山訓子)

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