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 近頃、日本にはやるものといえば、遅まきながらの「撤退劇」。大学入学共通テストへの英語民間試験導入は延期、東京五輪マラソンは札幌へ。英語民間試験の導入やマラソン開催地の問題は、なぜこんなにこじれたのか。なぜもっと早く軌道修正できなかったのか――。こんな疑問を、元官僚で行政法にくわしい福井秀夫・政策研究大学院大教授にぶつけてみました。

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 そもそも英語民間試験はなぜ導入されたのか、ご存じですか? 日本人の「英語を話す技能を高める」という政府の大目標があったからです。

 でも、文部科学省はそれを達成する方法について十分な実態調査や、関係者からの意見聴取をしませんでした。

1958年生まれ。専門は行政法、法と経済学。81年に建設省(現国土交通省)入省。都市局、住宅局、大臣官房会計課などで勤務後、退官。法政大教授などを経て現職。著書に「司法政策の法と経済学」「新行政事件訴訟法」「教育の失敗」「官の詭弁(きべん)学」ほか。

 実は同省の調査では、中学英語教員の約6割、高校英語教員の約3割の英語力が「英検準1級(大学中級程度)相当」未満、すなわち高卒程度以下という実態が明らかになっています。

 中学高校で教える側が十分身につけていない英語力を大学入試で受験生に求める。これは本末転倒です。にもかかわらず、文科省は軌道修正しませんでした。

 「英語を話す技能を高める」というそれ自体は批判しにくい大きな目標(一般的了解)の下で既成事実を積み重ねていったのです。

 五輪のマラソンを巡る構図も同じようなものです。競技の時期も場所も実質的な決定権は東京にはないということを、招致委員会はどこまで自覚して招致したのでしょうか。五輪という一大イベントの負担と受益が見合っているのかを検証しないまま突き進んだようにみえます。なし崩しで札幌に移転が決まったいまも国内関係者それぞれが責任を押しつけ合っています。

 英語民間試験、マラソンともに事前の検証作業が不十分で、外部から多くの的を射た批判が寄せられていたのに結論ばかりが先行した。これが問題がこじれた原因です。

「止められない」 公共事業と同じ構図

 一般的了解のもとでいったん始まると、なかなか止められない典型が公共事業です。

 ダムや干拓など巨額のプロジェ…

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