ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終結した30年前、選挙に基づく欧米型民主主義が旧共産圏にも定着すると、多くの人が期待した。今、発展したサイバー空間を利用して世論を操作し、選挙に介入する動きが相次ぐ。自由と繁栄を謳歌(おうか)するはずだった市民社会は、思わぬ脅威に直面している。(ワシントン=渡辺丘、ロンドン=国末憲人)
「取り返しがつかないことをされた。今でも怒りが収まらない」。2016年の米大統領選で民主党のクリントン陣営の世論調査を統括したジョール・ベネンソンさん(67)は11月下旬、最高経営責任者(CEO)を務めるニューヨークのコンサルティング会社で「ロシア疑惑」を振り返った。
ロシアが米大統領選でトランプ陣営に肩入れし、介入したとされる出来事。今年4月、マラー米特別検察官がまとめた捜査報告書によると、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)は16年3月から、クリントン陣営関係者や民主党全国委員会などのネットワークをハッキングし、電子メールなど大量の情報を盗んだ。
ロシア企業「インターネット・リサーチ・エージェンシー」(IRA)はスタッフを米国に派遣し、これらの情報を使って集中的に世論を操作した。
大統領選期間中、接戦だったペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン3州の有権者向けに、クリントン氏の落選を狙った偽情報がソーシャルメディア(SNS)で流されたのは、ロシアの仕業だったと、ベネンソンさんは信じている。
この3州はいずれもトランプ氏が制したが、「外国の勢力(ロシア)に米国の民主主義(選挙)への介入を許した。それがなければ選挙に勝ったはずだったのに」と、ベネンソンさんは唇をかんだ。
このときの米大統領選で世論操作をしたコンサルティング企業の元社員が、手口を明かしました。フェイスブックから抜き取られた個人データを分類し、ターゲットにしていた人格とは。
プーチン氏の関与は
IRAの月額予算は、大統領…
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