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ハンコの逆襲②(全3回)

 会社の設立手続きをオンライン化するため、印鑑の届け出制度を廃止する――。安倍政権の成長戦略の一環として2017年末、そんな政府方針が打ち出された。

 ハンコ不要となれば、ハンコ業界の人たちにとって死活問題だ。業界関係者は官房長官の菅義偉らに働きかけ、18年6月に打ち出された安倍政権の成長戦略で、「廃止」と明記される事態はひとまず回避した。

 印鑑業界の本格的な「反転攻勢」は、ここから始まった。

「業界は大打撃だ」

 成長戦略が出た翌月の18年7月21日。山梨県昭和町で政府主催の説明会が開かれた。その名も「デジタル・ガバメント計画説明会」。カタカナの多い会合が、なぜ山梨で開かれることになったのか。

 会社の設立手続きを簡素化し、「24時間以内に会社をつくれるようにする」というのが政権の成長戦略の旗印だ。これに沿って政府は、印鑑届け出をかならずしも必要としない制度改正を進めようとしていた。そこに待ったをかけたいハンコ業界が、政府に対して説明会を開くよう求めたのだ。

 説明会は東京や大阪など全国6都市で開かれた。山梨の説明会の参加者は約200人と、ほかの大都市での説明会より多かった。山梨県内にハンコ産業の集積地があり、動員がかかったためだ。会場には、地元選出で衆院議員の中谷真一(43)、菅への働きかけに動いた当時、山梨県議で自民党県連幹事長だった臼井成夫(74)らも顔を見せていた。

 「急な制度改正で業界は大打撃だ」など、参加者からは反発の声が相次いだ。

 しかし政府側の出席者は、「印鑑を使いたくない人もいる」「法人印の届け出は残る。義務ではなく任意で選べるようになる」など、これまでの説明を繰り返すだけだった。

 参加者の一人で、甲府市で印鑑美術館「ありあんす」を運営する久保田孝(62)は首をかしげた。

 「カタカナばかりで何を言っているか分からない。24時間で会社を作って、次の日から商売をする。そんな時代にならないといけないのか」

 説明会では、「自民党山梨県印章支部の復活だ」との声もあがり、甲府市で印鑑事業を営む河西正博(75)らが集まった。

 ハンコ業界の利益を守る政治団体の再結成。政府への事実上の宣戦布告だった。

■「やっぱり政治を頼らな…

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