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 アフガニスタン東部ジャララバードで4日朝、現地の人道支援に取り組んできたNGO「ペシャワール会」(事務局・福岡市)の現地代表で、医師の中村哲(てつ)さん(73)の乗った車が何者かに銃撃された。州政府などによると、中村さんや運転手ら計6人が死亡した。外国人を標的にする武装勢力に攻撃された可能性がある。同国最大の武装勢力タリバーンは犯行を否定する声明を出しており、治安当局が襲撃犯の特定を急いでいる。

 ペシャワール会によると、中村さんは同国東部で進めている灌漑(かんがい)工事の現場に向かう途中だった。2008年に同会の日本人スタッフ、伊藤和也さん(当時31)が殺害される事件があり、警備員を付けて活動していたが、待ち伏せされた可能性がある。

 中村さんたちが運ばれた現地の病院によると、中村さんは胸などに複数の銃撃を受け、緊急手術を受けた。当初は意識があったが、術後に医療施設の整った首都郊外の病院に移そうとして救急車で飛行場に運ばれた際、容体が悪化したという。医師は朝日新聞に「心臓に近い左胸に2発の銃弾が当たったのが致命傷となった」と語った。

 ジャララバードがあるナンガルハル州は、タリバーンや過激派組織「イスラム国」(IS)の支部組織、アフガン政府軍が三つどもえで戦う激戦地の一つ。タリバーンやISは、国外からの支援が届かぬようにして政府に打撃を加える狙いから、国際NGOや外国企業も標的にしてきた。

 国連などによると、同国では紛争が始まった01年以降、戦闘やテロなどで民間人4万人以上が死亡。日本外務省は全土に退避勧告を出している。一方で、国際協力機構(JICA)はペシャワール会の現地NGOと共同で灌漑事業を実施。中村さんは30年以上にわたる活動を認められ、同国のガニ大統領から昨年2月に勲章、今年10月に自由に入国できる名誉市民権を授与されたばかりだった。03年にはアジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞を受賞している。(乗京真知=バンコク、佐々木亮)

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<ペシャワール会>

 パキスタンで医療活動に取り組む福岡県出身の中村哲医師を支える目的で、国内の賛同者たちが1983年に設立したNGO。86年からはアフガニスタンでも人道支援活動を始めた。同国での2000年の大干ばつを受け、「病気の背景にあるのは食糧問題。農地の回復が急務」と03年から灌漑(かんがい)用水路の建設にも着手。10年に総延長25キロを超える用水路を完成させた。これまでに約1600本以上の井戸を掘り、水源確保や緑地化に貢献している。中村医師は19年10月、30年以上の活動を認められ、同国の名誉市民権を授与された。