がんになった妻は、記者である僕に料理を教え始めました。在宅緩和ケアを決意し、自宅へ帰る日がやってきます。過ぎゆく日常の中で、妻からはじめて褒められた料理とは。妻のブログのイラストとともに紹介します。

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僕のコーチはがんの妻 第15話(全16回)

 2018年春に救急搬送で入院した際、「家に帰るためベッドや手すりをつけよう」と言うと、「動けないほど苦痛がひどいなら病院の方が安心できる。気を使っちゃうしね」と妻は言った。僕の家事能力では在宅介護は無理、と思っているようだった。でも9月16日には「不安はあるけど家で過ごす覚悟ができてきました」としっかりした口調で医師に述べた。

 退院する18日朝、あいさつに来た若い医師に「先生、歩けるようになるかなあ」と妻は尋ねた。医師は一瞬困った顔をして「なればいいですねぇ」。妻は「チッ、なればいい、やて」と僕に耳打ちした。

 午前11時すぎ、ストレッチャーにのせられた。エレベーター前に看護師約10人が見送りにならぶ。「旦那さんも気を付けてくださいね」と声をかけられ、危うく涙があふれそうになる。

拡大する写真・図版せっかちで食いしん坊、怒りん坊、甘えん坊……と本人も自覚していた=妻のブログ「週刊レイザル新聞」から

 民間救急(2万8千円)でマンション5階の自宅に着くと、訪問入浴と酸素発生装置の業者、看護師、ケアマネジャー……と十数人が立てつづけに訪れる。混乱した妻は「私は見せ物やない! 吉本かぁ」と叫び、僕が笑って近づくと「お前もかあ、裏切り者め!」とべそをかいた。

 夕方、友人が来てくれて妻の横で食事をした。コーヒーや料理のにおいがただよう家でにぎやかに過ごせば、奇跡が起きるかもしれない、と、ちょっとだけ明るい気分になった。

「人前ではだめと言えん」周囲を気づかう妻

 ヘルパーは午前と夕方の1日2…

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