ノーベル賞の吉野さん、なぜ名城大へ? ゆかりないのに
木村俊介
今年のノーベル化学賞を受賞する吉野彰さん(71)=旭化成名誉フェロー=は、2017年7月から名古屋市の私立名城大学の教授も務めている。大阪府出身で京都大学卒、勤務する旭化成は関東。名古屋とはゆかりがないのに、なぜ名城大に?
きっかけは、名城大が開学100周年を迎える2026年に向け、教育力がある研究者を招聘(しょうへい)しようとしたことだった。吉久光一学長(15~18年度)が、各学部長らに推薦を指示。研究担当の副学長だった磯前秀二(ひでじ)・農学部教授(67)は「難題だな」と思いながら、こう考えた。
「基礎研究、応用研究、事業研究といろいろな段階がありますが、名城大として事業研究で通用する学生を育てたい」
その少し前、旭化成の社長に浅野敏雄さん(67)が就いたことを新聞記事で知った。東京大学理科二類の同期で、1年の時に一緒に生物学の実験をした仲だ。「あいつ、偉くなって」と思ったが、妻に背中を押されて連絡を取り、旧交を温めていた。浅野さんが社長を退任した後、名城大に招いて研究室を見学してもらったこともある。
宴席で、浅野さんが若いころ…