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 兵庫県上郡町内で今月1日、遮断機が下りた踏切内に立ち往生した軽自動車を、通りがかりのタクシー運転手らが見事な連係プレーで救出した。警報音が鳴る中、力を合わせて車を踏切外に押し出し、踏切に向かっていた貨物列車を非常ボタンで緊急停車させ、全員が無事だった。

 この日午後1時前、町内のタクシー会社「ミウラギ」に勤める稲田建起(たてゆき)さん(67)がなじみの客を乗せ、JR・智頭急行の上郡駅西側の踏切にさしかかると、すでに遮断機が下りているのに踏切内で動けずにいる軽乗用車を見つけた。

 踏切には計4本の線路が通り、車は一番手前の線路上に止まっていた。向かってくる列車の進行方向を示す踏切の表示を見ると、車がいる線路を通過する恐れがあった。

 稲田さんはとっさにタクシーを降り、遮断機をくぐって車に駆け寄ると、運転席には放心したような高齢男性がいた。そのまま車を押して踏切から出そうと「ギアをニュートラルに」と呼びかけると、男性はようやく反応してギアを操作。他の車から降りてきた人、近所の住人と一緒に3人で車を押した。その間、タクシーの乗客男性(70)が踏切の非常ボタンを押し、その上に記された緊急連絡先に携帯電話で事態を知らせてから救出に加わった。4人で車を押し、なんとか踏切の外へ出した。

 救助された高齢男性は「ガソリンが切れた」と話していたといい、駅から職員が来たのを確認して稲田さんは名前も名乗らずタクシーを発車し、乗客男性を目的地に送り届けた。

 「線路沿いの道を走り出すと、貨物列車が踏切の200~300メートル手前で停車していた。ここまで迫っていたのかと驚いた」と稲田さん。救助に向かった時は「何も考えず、体が勝手に動いた。乗客の方が非常ボタンを押していなかったらどうなっていたか。感謝です」と振り返った。

 乗客の男性も「現場は頻繁に列車が行き交う踏切。惑うことなく救出に向かった稲田さんはすごいなと思った」と話している。

 JR西日本は「事故を防いだ運転手らの行動に感謝します。ただ、列車はすぐには止まれません。立ち往生などを見かけたら、まずは非常ボタンを押して列車を止めるようにしていただければ」(近畿統括本部)としている。(伊藤周)