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 このコラムでは、あなたに知っておいてほしい、カラダや性の話をつづります。

 社会人一年生という23歳の女性。月経痛(生理痛)がひどくて仕事もままなりません。外回りの営業担当でしたから、月経の時など、車の中で痛みに耐えていました。だから、営業成績が上がらず、帰社すると上司から嫌みを言われたりして……。

 雑誌に掲載された僕の記事、「月経痛、我慢しますか?」が目に留まり受診されました。

 聞けば、月経が始まって間もなくのこと。月経時の痛みに耐えかねて母親に事情を話すと、「子どもを産めば治るから」と。将来結婚するかどうかも、もちろん子どもを持つかもわからない中学生に向ける言葉だろうかと思ったそうです。その時以来、この件で母親に相談することはしなかったといいます。

 結局、中学生から社会人になるまで、痛みに耐える生活が続き、今回の受診となりました。

 情報が届かなかったばかりに、10年近く我慢し続けることになった月経痛。実は、痛みを和らげることは、決して難しくないのです。

月経痛、治療が必要なケースも

 月経の悩みのある女性のうち65.7%が月経痛を訴えています。

 ある製薬企業が2010年8月に、20~40歳代の女性930人を対象に実施した「月経に関する意識調査」によれば、「月経に関する悩みがありますか?」の問いに、60%以上の女性が「悩みがある」と回答しています。その具体的な内容は図に示した通りです。これによれば、月経痛、月経前症候群(PMS)、出血量に関する悩みが目立っています。

 日本産科婦人科学会は月経に伴って起こる症状を「月経困難症」と定義しています。薬を使う、日常生活に支障があるといったケースは月経困難症に当てはまり、中高生といえども4割ほどは治療を受ける必要があると推測されています。

 月経困難症には2種類あります。一つは診察しても特に原因となる病気や異常がないもの、もう一つは、子宮筋腫など何らかの病気が原因となって痛みが起こるものです。

 前者の痛みの特徴は、初経後2~3年から始まり、月経の初日および2日目ごろの出血が多いときに強く、周期性があります。子宮内膜が月経血となって出て行く通り道である子宮頸管が狭くなったり、子宮が過剰に収縮したりすることが原因です。

 一方後者は、月経前4~5日から月経後まで鈍い痛みが続くようなケースです。子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などの病気によるものの可能性があります。

 このように、何が原因でつらい月経痛が起きているのか、見極めが大切です。

月経痛を抑えるだけでなく…

 前者のような、特に別の病気を伴わない月経困難症の治療は、痛み止めや漢方薬などを使うことが多いのですが、最近ではエストロゲンとプロゲスチンというホルモンを含む薬、いわゆる低用量ピルを積極的に使うことを勧めています。

 ピルというのは、しばしば避妊に用いられる薬ですが、同じ成分の薬を月経困難症の治療のために使うこともあります。その場合は保険適用で、LEP製剤と呼ばれるのですが、ここでは混乱を招かないように「ピル」という言葉で統一させていただきます。

 痛いから痛み止めを使うのは対症療法といって根本的な治療法にはなりません。ピルを服用すれば排卵が止まり、子宮内膜の増殖が抑えられます。それとともに、過度な子宮収縮が起きることを抑えるので、月経痛を軽くする効果が期待できます。

 痛みを抑えるとともに、この子宮内膜の増殖を抑えるという効果もポイントです。なぜなら、月経困難症を経験した女性は将来的に子宮内膜症になる危険性が2.6倍になるという報告があり、ピルにはこの予防効果も期待できるからです。

 子宮内膜症というのは、本来は子宮内にある内膜が過度の子宮収縮などが原因で子宮の外(卵巣など)で増殖し、月経のたびにその部位で出血して腫瘤(しゅりゅう)が大きくなる病気です。不妊の原因にもなります。ピルは子宮内膜症の治療にも用いられています。

現代の女性は月経の回数が多い

 子宮内膜症は現代病と言われています。その理由として、妊娠・出産・授乳に消極的な現代の女性にとっては、以前に比べて月経の回数が驚くほどに多くなっていることが挙げられています。子宮内膜症は、月経の回数を重ねるたびにそのリスクが上がっていきます。

 もちろん、産むか産まないかは個人の選択の問題ですので、産まなくなった時代に、月経とどう付き合っていくかを考えることが大切になります。

 さて、冒頭の女性は僕の診察を受けた後、ピルを服用するようになり、月経痛がすっかり気にならなくなったといいます。月経痛を訴える女性には、積極的に婦人科での受診を勧めて欲しいと思います。

 次回は、ピルを使った月経のコントロールについて解説します。(アピタル・北村邦夫)

アピタル・北村邦夫

アピタル・北村邦夫(きたむら・くにお)

1951年生まれ。産婦人科医。自治医科大学医学部一期卒。リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の向上などをめざす一般社団法人・日本家族計画協会理事長。同協会市谷クリニック所長。(http://www.jfpa-clinic.org/) 予定外の妊娠の回避や、性感染症予防の啓発に力を入れている。著書に「ピル」(集英社新書)、「ティーンズ・ボディーブック(新装改訂版)」(中央公論新社)など。