[PR]

 ADHDの特性を持ちながら子育てしているリョウさんは、娘の小学校入学を心配しています。毎日、自分で学校へ行く準備をして、帰った後に提出物を渡すといったことができるだろうか――というものです。

生きるのがつらい女性のADHD
仕事も恋愛もつまずいてばかり……。
ADHDに悩む30代女性「リョウさん」の記事一覧はこちら

 リョウさんはまず、我が子に幼稚園へ行く準備を自分でさせてみることにしました。それには、まず準備をするためのやる気を出してもらわなければなりません。

 リョウさんの子どもは、最近髪の毛をリョウさんに結んでもらうのが大好きです。いろんな髪飾りに興味がありますし、三つ編みや編み込みをして欲しいというのです。

 リョウさんとしては、忙しい朝に凝った髪形を結ってあげるなんて、かなり難しい注文でした。が、もし我が子が幼稚園に行く準備を漏れなくしてくれたとしたら、ちょっとはリョウさんの負担は減って、髪の毛を結んであげる時間をとることができるかもしれないと考えました。

 リョウさんは、娘にこういいました。

 リョウ「ほら、みて! 新しい髪飾り買って来たのよ。これつけて幼稚園行きたくない?」

 言うや否や、リョウさんの娘は髪飾りに首ったけでした。

 リョウ「でもね。ママ、朝はほんとに忙しくて、髪の毛なかなか結んであげられないじゃない? でもさ、幼稚園行く準備手伝ってくれたら、時間がとれそうなの。行く準備、自分でできるかな?」

 娘はなにがなんでもやりたいという様子でした。

 リョウさんはかごを取り出して、ひとつずつかごに入れながら説明しました。

 リョウ「まず、タオルでしょ、それから、歯ブラシね」

 もう待てないというように横から娘は口をはさみます。娘が持って行く物の準備にやる気を出しているのは間違いありませんでした。

 次の日の朝から、リョウさん一家の朝の時間は、激変しました。

 娘が自分で幼稚園の準備をしただけでなく、準備をして髪の毛を結んでもらえるとはりきったために寝起きがよく、ご飯を食べるのもいつもより早かったのです。リョウさんは「早くしなさい」と言わずにすんで、ストレスが減りました。

誘惑に負けないための一工夫

 さて、小学校へ行くための準備はできるようになりましたが、さらに次なるステップもあります。

 小学生になると、学校からさまざまなプリントをもらってきます。これらを親に毎日のように忘れずに手渡す習慣をつける必要があるのです。ここからは、私からリョウさんにアドバイスしたいことを書いていこうと思います。

 幼稚園児であれば、お弁当や水筒を台所に出す練習から始めるのがいいですね。まずは帰宅して、玄関から、台所、かばんを置く場所の動線を考えてみましょう。大人なら玄関から自室へかばんを置きに行き、そのかばんからお弁当箱や水筒を取り出して、台所へ持って行くという行程を経ることが多いでしょう。

 玄関→自室→台所

 子どもですと、これらの動線の最中におもちゃが目に入ってそのまま遊び出す可能性大です。子ども部屋には誘惑がたくさんありますね。リビングでテレビでもついていれば、そこで立ち止まってしまうでしょう。

 ここは思い切った動線の短縮が必要です。

 たとえばですが、いっそ玄関をかばんの収納場所にしてしまうというのも手です。

 玄関→台所

 この動線の短縮で、成功率は上がります。同じ理由で、かばんを台所に収納するのもいいでしょう。できたばかりのお弁当や水筒と共に今日持って行く物をかごに入れて台所に置いておけば、朝起きた子どもはそれらを一気にかばんに詰めることができます。

拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

 幼稚園や小学校を終えた子どもは、とにかく「疲れたー! やっと家でほっとできる」といった気持ちでしょう。その解放感のなかでも実行できるような仕組みにしておくといいのです。

 もうひとつのポイントは、「ほっ」とひと息つかずに、帰って来た流れで、やるべきことをやってしまうことです。まるで家の中にまだ道が続いているような気持ちで、かばんの中身を出して洗面所で手洗いうがいをすませる、までひと続きの動作としてやりきってしまうのがお勧めです。そのあとゆっくりおやつにすればいいのです。

 大人でもそうではありませんか? 疲れきって帰宅して、ちょっとのつもりでソファに横になると、きづけば1時間経っていた・・・ということが。子どものうちから、帰宅後の習慣をつけてあげるのは、その子どもの人生で非常に有意義なことになると思いませんか?

 さて、ここまでで、持って行く物を自分で詰める、帰宅後提出物を出すまでが片づきましたね。でもまだまだ忘れ物撲滅には課題があるのです。次回も続きます。

<アピタル:上手に悩むとラクになる・生きるのがつらい女性のADHD>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。