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 SNSのアイコンに、アニメや漫画のキャラクター、芸能人の顔写真などを勝手に使う事例が後を絶たない。著作権や肖像権の侵害になる可能性が高く、中には訴えられるケースもある。今年5月には、俳優で歌手の星野源さん(38)がラジオ番組で、自身の顔写真をファンが使っていることに否定的な考えを示し、反響を呼んだ。あなたのそのアイコン、大丈夫ですか?

 5月28日深夜の「星野源のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)の中で、星野さんはファンから「私は源さんの写真をSNSのアイコンに使っているが、どう思うか。嫌ならやめようと思う」との質問を紹介した。これに対し「僕の個人的な思いとしては嫌です」と語った。

 その理由について「『みんなやっているからいい』みたいになっているけど、テレビや雑誌の画像、僕らがツイッターに上げた画像をとって上げるっていうのは法律的にはダメなんだよね」と説明した。どうしてもアイコンに使いたい場合は、自分でイラストを描くといったことをしてほしいと訴えた。

 これに対し、SNSを利用するファンからは「はっきり言ってくれて良かった」「アイコン変えました」「マナーを守れないのはファンじゃない」と好意的な反応が広がった。

 無断使用については、芸能人や有名キャラクターだけでなく、自然や動物の写真にも注意が必要だ。

 「たった1枚の写真だが、私たち写真家はこれで飯を食っているんだ」

 2016年6月ごろ、札幌市の写真家の縄田頼信さん(61)は怒りを覚えた。並んで歩く2羽のペンギンの写真が切り取られ、顔の部分が見知らぬ人のSNSのアイコンになっていることに気づいたからだ。

 縄田さんは30年以上、北海道内の自然や動植物などを撮り、プロの道を歩んできた。作品には技術だけでなく、零下20度でシャッターチャンスを待ちつづけるといった苦労が詰まっている。無断使用を見過ごすわけにはいかない。相手に使用の中止を求めると、いったんアイコンが消された。

 しかしここで話は終わらなかった。同じ人物がSNSで別のアカウントをつくり、繰り返しペンギンの画像をアイコンに使っていたことがわかった。「あまりにも人をバカにしている」。刑事告訴に踏み切った。

 告訴を受け、北海道警は11月18日、大阪府内の女子大生を著作権法違反の疑いで書類送検した。札幌地検が現在も捜査を続けている。著作権法に違反した場合、10年以下の懲役か、1千万円以下の罰金などが科される。

 縄田さんが法的な手段をとるのは今回が初めてではない。10年ほど前、検索サイトで画像検索をすると自身のホームページに載せた見本用の写真と同じものが大量の無関係のサイトから見つかったのがきっかけだった。作品を守るため、使用料や慰謝料を求める裁判を100件以上起こしてきた。現在も札幌地裁などで約20件が係争中だ。ほぼすべての裁判で主張が認められているという。

 悪質と判断したら告訴もする。これまで20件以上で、今年だけでも6件になった。不起訴処分になることがほとんどだが、その過程で示談に応じる相手も多い。

 「画像をネットで拾っただけ」「みんなやっている」「裁判になるとは思わなかった」。訴えた相手からは軽い言葉が返ってくる。縄田さんは「そもそも、画像の無断使用が犯罪だという認識がないのではないか」と憤る。

 ただ実際には、写真家が裁判などで相手に使用料を支払わせるのはハードルが高い。SNSの匿名の利用者を特定することに手間と時間がかかるためだ。

 縄田さんの場合、相手を突き止めるため、まずはネット回線を運営するプロバイダーの企業に情報開示を求める。だが、個人情報を理由に拒まれることがほとんどで、開示を求めてプロバイダーに裁判を起こす必要がある。開示を認める判決が多いが3カ月以上かかる。そのうえ、特定した相手が支払いに応じなければ別途、裁判を起こし、さらに1年近くを要する。

 ここまでしても、相手から20万円ほどしか得られないこともある。弁護士に頼むと赤字になるため、縄田さんは自身で裁判を起こしている。しかし、多くの写真家は裁判に必要な知識や経験がなく、泣き寝入りせざるを得ない状況だという。

 SNSと著作権との関係に詳しい会津大学の清野正哉・上級准教授は「費用の面などから、個人が権利侵害を訴えたり、プロバイダーに開示を求めたりするのはハードルが高い。ネット上での権利侵害を専門に扱う第三者機関をつくるのも方法の一つ」と提案する。そのうえで「これまで教育現場では、子どもたちがSNSなどを使った犯罪の被害者にならないようにという視点が中心で、加害者になる可能性を考えていなかった」と指摘する。(武田啓亮)