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 自分の認識する性別で社会生活を送ることは、重要な法的利益だ――。女性として生き、女性トイレの自由な使用を求めた経済産業省職員の訴えに対し、12日の東京地裁判決は、社会の意識の変化を踏まえて、多様性を尊重していく重要さを明確に示した。勝訴した職員は社会全体に理解が広がるよう願った。

 自分の認識する性別で生きる。そんな多数派には当然の権利が、生まれた時の性別とは異なる性別で生きるトランスジェンダーには十分保障されていない。それだけに、「真に自認する性別に即した社会生活を送れることは重要な法的利益」「国家賠償法上も保護される」と指摘し、経産省の対応やそれを追認した人事院の判定を違法と認めた今回の判決の意義は大きい。

 原告は11年かけて女性ホルモンの投与を進め、私生活で化粧や女性用の服に慣れていった。女性への「社会的性別移行」ができたと感じてから、女性トイレの使用など女性職員としての処遇を申し出た。上司には「残りの人生、自分により正直に生きたい」と思いを伝えた。

 皮膚の病気などで、予定していた性別適合手術は受けられていない。経産省は、原告が手術を受けず戸籍上の性別を変更していないことを理由に、硬直的な対応に終始。他の女性職員との間にトラブルが生じる恐れがあるとして、職場から2階以上離れた女性トイレを使うことや、異動したら同僚の女性職員に性同一性障害だと説明して理解を得るよう「強制的なカミングアウト」(原告)を求めた。

 性的少数者への配慮から大企業や公共施設では性別に関係なく使える多目的トイレなどの設置が進むが、原告のように自認する性別のトイレ使用を望む人も多い。ただ、周囲への配慮などから職場や学校が認めないケースが絶えない。

 金沢大の岩本健良准教授(ジェンダー学)が企業と共同で行った2017年の調査では、トランスジェンダーが性自認に沿ったトイレを使うことについて、非当事者の計35%が「どちらかといえば抵抗がある」「とても抵抗がある」と答えた。

 それでも判決は、他の職員への配慮などを考えても「直ちに自認する性別のトイレの使用を制限することは許されない」と個々の事情や社会状況を踏まえた対応を求め、今回のケースでは「原告の法的利益の制約を正当化できない」と判断した。経産省のような処遇は「意思に反して身体への侵襲を受けない自由を制約する一面もある」と、性別適合手術を強いるかのような対応も問題視した。

 今の性同一性障害特例法では、性別適合手術を受けて精巣や卵巣を切除し、生殖機能を失わなければ、戸籍上の性別は変えられない。心身への負担の大きさから手術を受けず、原告のように外見を変えても戸籍を変えられない人は多い。大阪府立大の東優子教授(性科学)は「手術を受けていない、戸籍が変わっていないという形式論で、小中学校でも性自認に沿ったトイレの使用が認められない現状がある。判決の意義を踏まえ、職場や学校や地域社会で性自認を尊重した対応がいっそう広がることを望みたい」と話した。(二階堂友紀)

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