拡大する11年目を迎えたアリババの「独身の日(11月11日)」。24時間セールの売り上げは2684億元(約4兆2千億円)に達した=2019年11月、浙江省杭州市、アリババ提供
中国の消費低迷をものともせず、中国のIT大手アリババの快進撃が続く。その源泉である「売る力」は、どこからきているのか。
浙江省杭州市のオフィスビルのスタジオは光に包まれていた。進行役の男性が小型カメラの前に持ち出したのは、岐阜県の美容機器メーカー、ARTISTIC&CO.の美顔器。「顔のたるみの対策ができます。この生中継だけの特別価格です」
アリババ集団が運営する「タオバオライブ」という生中継のネットショッピングだ。「パックは必要ですか?」。視聴者からスマートフォンで寄せられる質問に専門家が答えていく。画面には、購入に誘導するボタンが表示された。
拡大するARTISTIC&CO.の美容機器の中継販売は、機器の専門家の男性(左)と美容の専門家の女性の2人1組で行われていた=2019年12月9日、浙江省杭州市、福田直之撮影
11月11日の「独身の日」セールに向け、メーカーの社長が生出演して予約販売した10月21日、30秒で約1万元(約15万円)の美顔器6千台が蒸発するように完売した。セールの売り上げは昨年の5倍近い1・4億元(約22億円)。中継が半分を占めた。
人工知能(AI)が商品の説明を感知し、購入ページを自動表示する。去年まで最大7秒あったタイムラグは1・5秒に――。2015年に導入した中継販売を磨き上げたのは、クラウドコンピューティング技術だ。今年のセールの目玉となり、出店者の半数超が導入。流通総額の7%強の200億元(約3100億円)を売り上げた。アリババの最高市場責任者、董本洪は「消費者が直接質問でき、豊富な情報を得られる。若者とのコミュニケーションにはテクノロジーが必要だ」と胸を張った。
中国経済の失速が鮮明になるなか、前年より26%増の2684億元(約4・2兆円)を売り上げた「独身の日」セール。その原動力は、片田舎の農村にもあった。
省都から車で約4時間。若者が…
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朝日新聞国際報道部