[PR]

 柔道界で「阿部一二三に勝った女子選手」と知られる女子63キロ級の鍋倉那美(三井住友海上)が大金星を挙げた。中国の青島で開かれているマスターズ大会で13日、世界選手権3連覇中のクラリス・アグベニェヌ(フランス)に勝利。東京五輪の代表争いは国内の2番手ながら、日本勢の壁になっていたアグベニェヌを破ったインパクトは大きい。

 オール一本勝ちで決勝に進んだ鍋倉は、世界女王が相手の決勝も臆さず攻めた。剛腕のアグベニェヌが潰しにきてもお構いなし。「相手の嫌なことを考えた」。アグベニェヌの試合映像から、担ぎ技への対応が悪いと分析ができていた。「失うものはないから、気持ちで技をかけた」。普段はやらない担ぎ技を連発。主導権を握った。

 最後は延長4分過ぎ、足が止まったアグベニェヌの腕に絡みつき、強引に背中に乗せて転がした。表彰式を終えた第一声は「実感がわかない」。夢心地の様子だったが、周到な準備と勇敢な攻めが結実した勝利だった。

 準決勝では世界選手権2位で、代表争いの1番手を走る田代未来(コマツ)にも勝った。「ここで負けたら終わりだと思っていた。もう一踏ん張り、食らいついていきたい」。実績豊富な田代が相手だけに、まだ追う立場には変わらない。来年2月に欧州で開かれる国際大会が、代表選考の次の山場になる。

 兵庫県出身。男子66キロ級の元世界王者で、同郷の阿部一二三(日体大)とは幼少期からの知り合いだ。小学生時代は何度も阿部を投げ飛ばし、阿部が「勝ったことがない」と言うほどの武勇伝が残る。「阿部選手も必死だと思う。自分も必死に頑張りたい」(波戸健一)