ゴルバチョフ氏88歳、いま語る 「米ロは対話再開を」

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編集委員・副島英樹 モスクワ支局長・喜田尚
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 核兵器が増え続けた米ソ冷戦期に初めて核削減へ道筋を付け、冷戦終結にも導いたミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領(88)が今月、モスクワで朝日新聞記者と単独会見した。核兵器に「歯止め」をかける米ロの合意が相次ぎ消える中、新たな軍備競争への懸念を示し、核なき世界へ向けた動きを復活させなければならないと警告した。「核戦争は許されない。そこに勝者はない」と繰り返した。

 来年は広島・長崎の被爆75年核不拡散条約NPT)の発効50年を迎え、世界の核状況にとって節目の年となる。同氏がブッシュ(父)米大統領と冷戦終結を宣言したマルタ会談から30年となる今月3日、インタビューに応じた。

 1987年に署名した中距離核戦力(INF)全廃条約がこの夏、米国の脱退で失効したことについて、「時流を逆行させる恐れがある」と指摘。2002年に米国が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から脱退した動きや、オバマ大統領時代に米ロが締結した新戦略兵器削減条約新START)の再延長に米国が否定的なことに触れ、戦略的安定のための三つの柱が失われる事態は大きな危機だと警鐘を鳴らした。

 トランプ政権は小型核弾頭など「使える核」の開発を表明し、ロシアの違反を理由にINF条約を脱退後、中距離ミサイルの発射実験を実施。ロシアも対抗姿勢を見せている。こうした状況に、「米ロがまず、対話を再開すべきだ」と主張。「世界の核戦力の90%を持つ核大国は、核廃絶に動くということを世界の世論に請け負わなくてはならない」とした。

 核抑止力も明確に否定。かつて核抑止論者のサッチャー英首相と激論を交わしたことにも触れ、「核抑止力は総じて世界を守らない。むしろ世界を脅威にさらし続ける」と強調した。

 核軍縮の第一歩となったINF条約締結を促したのは、86年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故だったとも振り返った。「核兵器を何とかしなければ、ということを示す教訓となった」と述べ、原発事故の被害が、戦時に核が使われる姿を想像させたとした。

 被爆地の広島と長崎がある日本については、「核兵器とは何かを体験した初めての国だ。日本の役割、日本の言葉は重い。私は日本とともにある」と語り、米ロの対話再開への後押しに期待感を示した。

 同氏は85年にソ連共産党書記長に就任し、ペレストロイカ(改革)やグラスノスチ(情報公開)、新思考外交などの改革を提唱。90年に初代大統領に就任し、同年のノーベル平和賞を受賞。91年末のソ連崩壊で大統領を辞任した。現在、ゴルバチョフ財団の総裁を務める。(編集委員・副島英樹、モスクワ支局長・喜田尚)

■ゴルバチョフ氏の発言骨子…

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