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 千葉県印西(いんざい)市の老人ホームで同僚らに睡眠薬を飲ませ、交通事故などで6人を死傷させたとして、殺人・同未遂などの罪に問われた元職員・波田野(はたの)愛子被告(73)の控訴審判決が17日、東京高裁(朝山芳史裁判長)であった。高裁は事故に巻き込まれた被害者への殺意まで認めて懲役24年(求刑懲役30年)とした一審の裁判員裁判の判決を破棄し、審理を千葉地裁に差し戻した。

 この判決が確定すれば裁判員裁判がやり直され、巻き込まれた被害者について被告に対しては殺人未遂罪ではなく傷害罪が適用される可能性がある。

 高裁は、被告が同僚らに睡眠薬を飲ませて運転を促したことについて、「死んでもかまわない」という「未必の殺意」を事故に巻き込まれた被害者にまで認めた一審の判断は不当だと指摘。酒を飲ませて運転させただけでも不特定多数に対する殺人罪に問われかねないと批判し、薬を飲ませた後の意識障害の程度など、運転すれば死亡事故に至ると予想できたかを具体的に検討すべきだとした。

 その上で、薬を飲まされて事故を起こした3人については殺意を認定できるとしても、事故に巻き込まれた2人に対する殺意までは認められず、傷害罪の成否について審理をし直すべきだと結論づけた。

 一審は、波田野被告が2017年2~6月、准看護師として働いていた老人ホームで、同僚ら4人に睡眠薬を混ぜたコーヒーや茶を飲ませて1人の意識を失わせ、3人に交通事故を起こさせて1人を殺害、巻き込まれた2人を含め計4人を殺そうとしたと認定した。

 控訴した弁護側は嫌がらせの目的で薬を飲ませたことは認めつつ、交通事故は偶然に左右されるもので、車の運転をするよう仕向けたことをもって殺意まで認定するのは「論理の飛躍だ」と反論。殺人罪の成立を否定し、薬を飲ませて意識を一時失わせた傷害罪にとどまると主張していた。(阿部峻介)