「達成感めっちゃでかい」 小6全員で100キロ歩いた

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渡辺純子
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 6年生全員が4泊5日で100キロを歩く小学校が福岡県にある。「ゆとり教育」の時代に始まり、当初は反対した親からも協力を得ながら、19回の歴史を重ねてきた。つぶれた足のマメを手当てしながら、朝から日暮れまで歩き続け、寝袋で寝泊まりするハードな行事。2日目を除く4日間、記者が一緒に歩き、子どもたちの表情を間近に見た。

1日目 古賀市朝倉市 28.4キロ

 「がんばれ、がんばれ、6年生!」。ずらりと並んだ1~5年生に見送られ、6年生47人が元気に歩き出した。10月28日午前9時、福岡県古賀市立青柳小学校。恒例の「青小キャラバン」スタートだ。各地の体育館などに寝泊まりしながら、全員が4泊5日で県内100キロを歩く。

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 19回目の今回の目的地は直線で50キロ余離れた東峰(とうほう)村。山口来夢(らいむ)くんは「いつもラグビーの練習でめっちゃ走る。100キロなんか余裕です」と自信たっぷり。安松啓友(けいすけ)くんは「どうなっていくか楽しみ。なんかトラブルが起きたりとか」とワクワク。春木心彩(ここあ)さんは「ドキドキして夕べは眠れなかった。不安もあるけど、このメンバーなら大丈夫」とつぶやいた。

 天気は秋晴れ。田んぼが広がる道を2列で歩く。子どもたちはスタスタ歩きながらおしゃべりしたり、歌ったり。トンネルを「わー」と声を響かせて通り抜けた。この日歩く28.4キロは5日間で最長だ。「暗くなる前に着きたい」と、6年担任の教諭2人が時速4キロ超のペースで引っ張る。

 最初に休憩したのは8キロ先のショッピングモール。家族でよく行くという西園咲空(さくら)さんは「いつも車でピュン、なのに」。バイパスの長い上り坂で息を切らした。信号が赤に変わる前に横断歩道を走り抜け、前と間隔が開いたのを見てはまた駆け出す。

 小柄な智原莉央(りお)さんは「必死にしがみついていくって、このことやん」とすでにヘロヘロ。モールでお茶を飲んで少し休み、さらに2キロ歩いてお弁当。「普段の給食の千倍おいしい」とおにぎりをぱくついた。

 ひと息ついてまた歩き出す。「まだ100分の10か。気が遠くなる」と後藤彩音さん。来夢くんも「想像以上にきつい」。両足の親指にマメができた啓友くんは、自分でガーゼを貼って手当てした。でも、だれも保護者が運転する救護車に乗ろうとしない。「達成感がなくなる」「みんなで歩き切りたい」。この日付き添った心彩さんの母は「こういう経験は勉強より大事。絶対に将来何かの役に立つ」と励ました。

 やがて星がまたたきだした。男子が「冒険みたい」とはしゃぎだす。暗闇に体育館の明かりが見えた。「あれがうちらの今日の家だ!」。がぜん元気が出る。午後6時半、この日の宿泊先、太宰府市太宰府小学校に到着。「達成感、半端ない」と彩音さん。きつそうだった莉央さんも「いま考えたら、あっという間だった」と笑った。

 体育館でお弁当を食べ、近くの温泉で汗を流し、床に寝袋をじかに敷いて眠った。一緒に歩いた記者の歩数計は4万4千歩超。通った市町は八つあった。

3日目 朝倉市→東峰村 27.2キロ

 キャラバン2日目、子どもたちは太宰府市から朝倉市まで20キロ余を歩いた。その翌日の10月30日朝。朝倉市の朝倉東高校の食堂で、子どもたちがおにぎりとミカンを食べていた。前日も47人全員が完歩したという。トラックに荷物と寝袋を積み込み、体育館にモップをかけ、8時半に出発した。

 暑いくらいの秋晴れ。竹田亮くんは「きついと思ってたらきついけど、友達としゃべってたらいつの間にか着く」。歩くコツをつかんでいた。それでもやがて一人、また一人と遅れ始めた。最後の休憩地点に着いたのは午後4時15分。予定より1時間遅れていた。あと6キロ。ここから峠だ。1組担任の渡辺亨士郎教諭(28)が真顔で言った。

 「ここからは1列で行きましょう。上り切った先に『塔の元』という交差点があります。みんな、生きて、そこで会いましょう」。緊張が走った。

 4グループに分かれ、蛍光ベ…

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