聖職者の性的虐待、「秘密」にしない ローマ教皇が指示
ローマ教皇庁(バチカン)は17日、教会内での子どもへの性的虐待問題に対する新たな対策を始めると発表した。性犯罪の捜査や裁判に関わる情報を、聖職者らに課せられている「守秘義務」の対象から外すとする内容。事件の真相解明や、教会による組織的な隠蔽(いんぺい)防止につながる可能性がある。
ローマ教皇庁では、聖職者の人事や外交に関する情報などは公的な「秘密」に当たるとして、関係者に守秘義務が課せられている。だが、これを理由に聖職者が証言を拒むなどのケースがあり、性的虐待問題で実態解明の妨害になっているとの批判が出ていた。
こうした問題を解決するため、フランシスコ教皇(83)が今月、未成年者への性的虐待問題については守秘義務の適用を外すよう指示した。伊メディアは、今回の対策によって、性的虐待事件を審理するバチカン国外の裁判所が、バチカンが「秘密」としてきた文書を見られるようになる可能性も指摘している。
イタリアの被害者団体は同日、「加害者への法の裁きが得やすくなる、具体的な第一歩だ」とコメントした。一方、聖職者が教会内部に報告する義務は定められているが、今回の対策で捜査機関への通報が義務づけられなかったため「教皇の取り組みはまだ不十分」としている。
カトリック教会内での子どもへの性的虐待問題は、2002年に米紙が報じたことをきっかけに、世界各地で相次いで発覚。組織的な隠蔽も指摘され、カトリック教会が大きな批判を受けた。フランシスコ教皇は厳しい姿勢で臨む方針を示したが、教皇の側近らに相次いで疑惑が浮上し、教皇の責任を問う声も上がった。教皇は今年2月、性的虐待問題についての特別会議を開き、対策を検討していた。(ローマ=河原田慎一)