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 2020ミス・インターナショナル日本代表選出大会のグランプリに輝いた。

 「最年長で挑戦し、夢を追い続けた大変さと大切さを、大会を通して改めて実感しました」

 ステージの中心で目を潤ませながら笑顔でスピーチした。スポットライトを浴びながら、夢に描いた景色がようやく見えたと、心の中で思った瞬間だった。

 東京都千代田区にある共立女子大学に進学し、宇都宮を離れた。初めての都会の一人暮らし。数カ月経って摂食障害になった。日常生活も学業も何でも完璧にやろうと自分を追い込んだ結果だった。1年に体重が15キロ変わった。完治するのに2年かかった。

 宇都宮南部で育った。自宅近くには田んぼと山が広がる。子ども時代は泥んこになりながら兄や父とザリガニやカブトムシを捕った。市中心部の宇都宮短大付属高校までの片道約10キロを毎日自転車で通った。

 東京の生活は驚きの連続だった。女子大は自宅から通う人ばかり。みんなおしゃれ好きで化粧がうまく、聞いたことがない有名ブランドの服を着こなしていた。引け目を感じた。街中を歩く速度も速い。満員電車にも圧倒された。

 摂食障害での心配をかけるのが嫌で宇都宮にあまり帰らなかった。家族や友人が気遣って食や体調に関する話を避けていることに気付くと、申し訳なくなった。自分のペースで好きなものを食べるようにしていった。少しずつ病気を克服した。

 大学4年の時、ミス・ユニバース栃木大会でグランプリを受賞した。

 しかし、きつめのメイクや肌の露出、ウォーキングでのキレのある動き。求められる姿に合わせようとする度に、自分らしさが消えていきそうで葛藤した。日本大会では結果を残せず、悔しさばかりが残った。

 卒業後、航空会社で客室乗務員として働いた。1日1日を大事に過ごした。仕事は充実していた。それでも、別の仕事をしてみたいという思いが膨らみ、もう一度ミスコンにも挑戦したいと思った。ネットで目にしたのが、ミス・インターナショナルだった。今回から年齢制限が上がり、運良く申し込める上限の年齢だった。

 「外見だけではなく、内面が大事」。中学生の時に母に言われた言葉。

 「もう自分を変えることはしない」。人と比べることがないよう、地道な努力を続けた。舞台で一番に輝くというイメージトレーニングを重ねた。本番では心から楽しむことができた。

 昨春から都内の広告会社で働く。ミス・インターナショナルに出場することは会社でも上司ら3人にしか知らせていなかった。グランプリ獲得の翌日、出社すると、ニュースで結果を知った会社の人たちが拍手で迎えてくれた。

 今でも月1回は宇都宮の実家に帰る。母や姉とカフェやパン店で雑談してのんびりする。地元の人たちはみんなフレンドリーで、都内と違って近所づきあいも密だ。地元の空気に触れて心が落ち着いていく。今は世界大会に向け、楽しみたい気持ちでいっぱいだ。(中野渉

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 寺内千穂(てらうち・ちほ) 1993年、宇都宮市生まれ。宇都宮短大付属高校、共立女子大学家政学部卒業。客室乗務員を経て広告会社勤務。プロフィルの身長は171センチだが、「姿勢をよくしていたためか、この前測ったら172センチでした」。好きな物は甘い物、特にチョコレート。趣味は弁当作り。「毎日、お弁当を作って来る人は少ないので、周りから『すごい』と思われて満足」