[PR]

 インフルエンザの患者さんが増えてきましたね。毎年、12月に学級閉鎖などが相次ぐ流行があって、冬休みになり小康状態、1月の学校・園の再開とともにまた患者さんが増えます。

 お子さんがインフルエンザにかかってしまったら、とにかく心配ですね。薬を使って「少しでも楽にしてあげたい」と思うでしょう。

 インフルエンザの治療には、ウイルスの増殖を抑える抗インフルエンザ治療薬がしばしば用いられます。みなさんも「タミフル」や「ゾフルーザ」といった薬の名前を聞いたことがあるかもしれません。でもこれらの抗インフルエンザ薬は、実は絶対に使わなければならない、ということではないのです。

 日本小児科学会が公表しているインフルエンザの治療に対する指針を見ると、抗インフルエンザ薬については、以下のような考え方を示しています。(日本小児科学会2019/2020シーズンのインフルエンザ治療指針http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2019-2020_influenza_all.pdf別ウインドウで開きます

 ・幼児や基礎疾患を持っている子などには推奨。(基礎疾患とは肺疾患・心血管疾患・腎疾患・肝疾患・血液疾患・代謝性疾患・神経疾患などです。こうした子どもたちは、重症化するリスクが高いとされています)

 ・なるべく発症後48時間以内の使用(抗インフルエンザ薬は投与が遅いとあまり効果が期待できません)

 ・一方で、多くは自然軽快する疾患でもあり、抗インフルエンザ薬の投与は必須ではない。

 もちろん、乳幼児よりももっと大きな子でも、抗インフルエンザ薬を使うことがあります。抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に服用すれば、熱が出ている期間を1日弱短くすることができるとされています。インフルエンザは急な高熱が特徴なので、発症とは一般的に熱が出たときを指します。

色々な抗インフル薬、違いは?

 抗インフルエンザ薬にもいくつか種類があるので、「少しでも効くものを」と思うかもしれませんね。それぞれの薬の大きな違いは、効き目よりも服用の仕方です。

 例えばタミフルは、カプセルやドライシロップの薬を1日2回、5日間のむもので、生後2週間から服用できます。

 リレンザやイナビルは粉を吸引するという服用方法なので、5歳未満のお子さんは一般にうまく吸えません。5歳から10歳未満のお子さんは吸入ができると判断できる場合だけ、処方します。

拡大する写真・図版イラスト・森戸やすみ

 新しい薬のゾフルーザは1回だけのむ薬ですが、子どもには耐性ウイルスが増えるという懸念があり、特に12歳未満には推奨されません。抗インフルエンザ薬が効かない耐性ウイルスばかりになってしまった場合、重症化した症例に対して治療法がなくなり困ります。そういう理由で、診療所などで親御さんはゾフルーザをもらったのに、お子さんには違う薬ということがあります。

 このほかに、入院するような重症患者さんに使う点滴のラピアクタもあります。

自宅での過ごし方は

 小児科学会の指針にあったように、抗インフルエンザ薬を使わなくても、ほとんどのインフルエンザは治ります。

 対症療法が必要なら、その薬をのみ、結局は水分を十分に取り安静にしているのが一番です。「元気で横になりたがらない」というようなお子さんは、お家でいつでも休めるような状況で静かに遊びましょう。

 対症療法の薬というのは、解熱鎮痛薬などです。熱や頭痛、関節痛・筋肉痛などがあったら、解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンを使います。商品名ではカロナールや小児用バファリンといった薬です。

 子どもはインフルエンザになると、重症化して脳症になるケースが大人よりも多いのですが、上記以外の解熱鎮痛薬は、脳症の発症と関連があるのではないかと言われています。発熱した時に自宅にある解熱鎮痛薬をのませることもあるかもしれませんが、急な高熱などインフルエンザが疑われる場合には注意しましょう。

 このほか、せきや消化器症状がひどければ、それぞれ症状をやわらげる薬があるので、医師に相談してみてください。

 インフルエンザの場合は、お子さんの様子をよく見守ることも大切です。特に発熱して48時間以内は注意深く見守りましょう。

 抗インフルエンザ薬の使用の有無に関わらず、意味のわからない行動や言動があったり、ろれつが回らなかったりすることがあります。このほかにも、呼吸が苦しいなどのつらい症状が出てきたり、けいれんや意識がもうろうしているといったことがあれば、すぐに受診しましょう。

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/

森戸やすみ

森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はどうかん山こどもクリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。