埼玉県の秩父地域で、別荘がよく売れている。リゾート地に建った別荘はバブル崩壊後、管理費や固定資産税などの負担が重く、売ろうにも売れない「負動産」と化す物件が少なくない。なぜ秩父では売れるようになったのか。現地に足を運んだ。
東京・池袋から特急で1時間余りの埼玉県横瀬町。ここで9月末から「雲上生活」を始めた40代の女性に会った。秩父地域はこの数年、首都圏で高い山に登らなくても雲海が楽しめる場所として知られる。雲海の可能性がある気象条件の日は、未明から多くの雲海ファンが集まるようになった。
「ちちぶ空き家バンク」とは
女性が住むのは、西武秩父線横瀬駅から車で数分のところにある別荘地の一角。1990年代に分譲され、70戸ほどの別荘が立つ。その中でも一段高い場所に立つ物件に、さいたま市内から移り住んだ。「ここから見える雲海はすばらしい。見えそうな日は朝5時ぐらいに起きて、6時前に日が出てくると雲が白く広がっているのが見えてきます」と楽しそうに話した。
物件は、「ちちぶ空き家バンク」のサイトから選んだ。購入額は1千万円余り。一般の不動産会社のサイトに比べて空き家バンクは写真が多く、物件の説明が丁寧だったという。「ホームページで、建物からの眺望がすごくよくて、温かく迎え入れてくれる感じがわかりました。ほかのサイトと比べれば比べるほど、よさがわかりました」
この物件の売り主は、いま都内に住む男性(80)。20年ほど住んだが、高齢で寒さがこたえるようになり、車の運転にも不安が出てきた。不動産業者を介して売りに出したが3カ月たっても買い手がつかなかったところ、空き家バンクの存在を知り、今回の売買につながった。
ちちぶ空き家バンクとは、どんなサイトなのか。
2011年からサイトを運営…