拡大する写真・図版イラク北部バルダラシュの難民キャンプで暮らす子どもたち。2人は双子で、右は男の子のロジャバくん。左は女の子のカミシュクちゃん。カメラを向けるとポーズを決めてくれた=2019年12月5日、杉本康弘撮影

[PR]

 昨年12月初旬、イラク北部スヘーラ。東京から約8千キロ離れた中東の小さな町に、日本との意外なつながりを見つけた。シリアと国境を接する丘陵地帯に並ぶ、高さ5メートルの白色の巨大テント4棟。設置したのは日本のNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」(PWJ)だ。昨年10月中旬、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から設置を要請された。

拡大する写真・図版地図

 1棟の広さは約240平方メートル。中には毛布やマットが山積みになっていた。テントはシリアからの難民の一時避難所だ。昨年10月、少数民族クルド人が多く住むシリア北部にトルコが越境攻撃を始めて以来、約1万8千人のクルド人が越境してここに逃げてきた。

 PWJは1996年の設立以来、イラクで難民と国内避難民の支援を続けている。現在のイラク事務所の日本人トップは井上恭子(きょうこ)さん(46)。クルド人難民が押し寄せたことを受けて、新たに約3千の簡易テント設置を陣頭で指揮した。

拡大する写真・図版シリアから逃れてきたクルド人難民が生活するイラク北部ドホーク近くの難民キャンプで、現地スタッフとともに、住宅設備や道路の状況などを調査する日本のNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」の井上恭子さん(手前から4人目)。井上さんが携帯電話のカメラを向けると、子どもたちは笑顔を見せた=2019年12月11日、杉本康弘撮影

 昨年12月中旬、イラク北部ドホーク近くの難民キャンプを視察する井上さんに同行した。井上さんはPWJが整備した排水溝の前でクルド人難民の女性に「排水溝は役に立っていますか」と話しかけた。「もちろん。毎日掃除しています。ありがとう」と喜ぶ女性と井上さんは握手した。

拡大する写真・図版イラク北部バルダラシュの避難民キャンプには、トルコの侵攻により、多くのクルド人がシリアから逃げてきていた=2019年12月2日午後、杉本康弘撮影

 「柔らかい手。ガサガサした手。いろんな手と握手してぬくもりを感じる時、現場に立つ大切さを感じます」

 愛知県安城市出身。96年に山梨県の都留文科大を卒業後、名古屋市の地図製作会社に就職し、地図のデジタル化などを担当した。「女性管理職のロールモデルに」と期待されたが、深夜まで残業が続く中、自分の仕事が誰の役に立つかわからなくなった。

 2008年、関心のあった途上国支援の道に進もうと決意して退職した。原点は、子どもの時に見たアフリカの飢餓の写真展だ。やせ細り、ぽっこり腹部が出た栄養失調の子どもの写真が胸に突き刺さった。

 英国の大学院で開発学を学び、帰国後は長崎大大学院で医療支援を学んだ。15年10月にPWJに入り、17年12月にイラクへ赴任した。昨夏帰郷して妹の家に滞在した際、小学生のおいっ子に「どんな仕事をしてるの?」と聞かれた。彼の目を見て、「世界には隣の国から逃げてきて、家がない人がいるの。だから、家をつくっているんだよ。家がないと困るでしょ」と答えた。

拡大する写真・図版シリアから逃れてきたクルド人難民が生活するイラク北部ドホーク近くの難民キャンプで、現地スタッフとともに、住宅設備や道路の状況などを調査する日本のNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」の井上恭子さん(中央)。調査中、記念撮影を頼まれ、子どもを抱き上げた=2019年12月11日、杉本康弘撮影

 長崎大大学院に在学中、アフガニスタンに多くの井戸と水路を残し、昨年12月に銃撃されて亡くなった中村哲医師の講演を聞いた。現地の人々と互いの差異を認め合いながら、共に働く姿勢に感銘を受けた。

 「私は日本人の先人が築いた遺産の上にポンと乗っているだけ。でも少しでも何か加えて、次の世代につなげたい。それができたら十分だと思うんです」

拡大する写真・図版シリアから避難してきた人々が一時滞在する大型テント。たくさんのマットレスや毛布が用意される中、難民の子どもが残していったとみられる靴が片方だけ残されていた=2019年12月9日、イラク北部スヘーラ、杉本康弘撮影

 イラクの首都バグダッドでは3日、米軍にイラン革命防衛隊の司令官が殺害された。米国とイランの緊張が高まり、中東情勢は混迷を深める一方だ。戦争になれば、クルド人と同じように、多くの人々が我が家を追われることになる。

中東の難民キャンプで暮らす人々に、遠く日本にいる我々はどう関われ、何ができるのか。記事の後半では記者が現場を歩き、考えます

 難民や貧しい人々に寄り添って…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

【5/12まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら