宮崎)九保大雇い止め訴訟 仮処分1年、まだ復職できず

大山稜
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 今年2月、宮崎地裁延岡支部で大学と元助教らの雇い止めに関する仮処分決定が出された。労働者側の「勝訴」といえる内容だったが、あれから状況は変わったのか。

 争いの内容は、九州保健福祉大(宮崎県延岡市)の薬学部で勤務していた元助教ら男女4人が、2018年度末に大学から不当な雇い止めを受けたとして、地位保全と賃金の支払いを求める仮処分を申し立てたものだった。

 この訴えに対し、地裁延岡支部は「契約更新を期待する合理的な理由が認められる」と判断。4人に対する雇い止めは労働契約法に反するとして無効とし、元助教の3人については来年3月までの賃金の仮払いを命じた。

 元助教らが復職を希望していたこともあり、騒動は解決に向かうと思われた。しかし、4人はいまだに大学に復帰できていない。

 当時、大学は「次年度から助教と助手に博士号を求める」という方針のもと、博士号を取得していなかった4人に雇い止めを通告。元助教らは「雇い止めは、それ以前に生じた教授からのセクハラ被害告発に対する報復だ」と訴え、大学側は「大学の経営難による人員整理でセクハラ告発は無関係」「元助教らには早く博士号を取得するように以前から告げていた」と雇い止めの正当性を主張していた。

 裁判所の決定の後、争いが続いていることを理由に大学側は、仮処分の内容に応じなかった。

 両者の争いは4月、元助教らが大学側を相手取った訴訟に発展。雇い止め後の賃金は元助教側が大学の口座を毎月差し押さえることにより支払われるようになったが、職場復帰はいまだに果たされていない。雪解けはおろか、むしろ溝が深まったように見える。

 仮処分決定から10カ月。4人が失職してからは1年8カ月が経過した。

 4人のうち元助教の男性は「中ぶらりの状態が長く続いている」。元助教の妻とともに夫婦そろって失職したが、「裁判が不利に働く可能性がある」と互いに再就職はしなかった。しかし、夫婦は2人の幼子を育てている。長期化する裁判に生活の困窮は避けられず、今は地元の薬局で薬剤師として週に4~5日のアルバイトをしながら大学復帰をめざしているという。

 この状況に率直な違和感が浮かんだ。そもそも今回裁判所が決定したような「仮の地位を定める仮処分」は、長期間の係争による労働者側の困窮を防ぐために賃金の仮払いなどを暫定的に命じる司法手段だ。しかし現状は、その決定内容が十分に果たされていない。大学側が異議を申し立てる権利はあってしかるべきだが、仮処分の意義そのものが損なわれている状況にも感じる。

 今月16日、延岡市で雇い止めの撤回を求める市民集会が開かれた。参加した市民からは「九保大は社会貢献の面で地元にとってありがたい存在。だからこそ、いま起きている状況が残念で悲しい」との声も聞かれた。

 大学の未来と元助教らの将来のために一日も早い解決が望まれるが、裁判は年明け以降も続く。果たして、いつ、どんな決着がつくのか。見通しはいまだに立っていない。(大山稜)