拡大する写真・図版大粒のタピオカが入った温かいミルクティーを手に、写真を撮る女子大生。この日もインターンを終えたばかりだった=2019年12月24日午後、東京都渋谷区、恵原弘太郎撮影

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 年末の東京・表参道。都内の私立大3年の女子大学生(21)は、イルミネーションの中、黒いリクルートスーツ姿で歩いていた。

 夕飯代わりの黒糖タピオカ入りのミルクティーが温かい。志望企業での3時間のインターンシップを終え、向かうのは就職活動の「塾」だ。

 就活塾「就活コーチ」は、表参道近くのワンルームマンションにある。慶応など有名大学の男女計6人が、グループディスカッションの講座に集まっていた。テーマは「ビールメーカーの新商品開発」。営業、生産、物流の立場になって議論する。女子大学生は「ビール全体の売り上げ減少が問題では」と、問題の前提を確認するよう促した。だが、1時間半後の「OB訪問と傾聴力」の回では、疲労からか、ほとんど発言できなかった。

 議論の後、学生は手元に配られた1~6のトランプのカードを互いに手渡し合った。最も影響力があった人に「1」、なかった人に「6」。「傾聴力」の回で、女子大学生の評価は自己評価も含めて最低の「36」。悔しさも、本番への不安ものみ込んで、「自分のせい」と受け入れた。

 広瀬泰幸代表によると、毎年80人ほどの学生が通う。技術革新とグローバル化で不透明な時代に、こうした就活塾は増えている。都内だけで50ほどあるという。背景には採用方法の複線化もある。OB訪問やインターン経由の「特別ルート」での採用も増えているという。1次選考を、コピペが簡単な書類選考から「ビデオ面接」に切り替える企業もある。

 今年は、「インターンの選考に落ちた」と、例年より2カ月ほど早い7月ごろから学生が集まったという。インターンは単なる職業体験にとどまらず、内定につながるとして重要になっている。焦りは切実だ。

 「売り手市場」といわれる世代だ。2020年大卒求人倍率は1・83倍と高水準をキープした。だがリクルートワークス研究所によると従業員5千人以上の企業の求人倍率は0・42倍(2020年大卒)と厳しい状況が続く。安定を求めて大企業を目指す人は多い。

 女子大学生も「スキルアップを考えるなら大企業。親も望んでいる」と話す。

 一対一での自己分析と、グループディスカッションの対策講座があり、内定を得られなければ全額返金をうたう「就活万全コース」。約30万円の受講料は、親が払ってくれた。発声方法や、面接中の手の置き方など細かいしぐさまで指導を受ける。

 中学受験のため、小学校から塾に通っていた。テストや大学の偏差値で自分の立ち位置が数値化され、それが指標だった。就活で急に「やりたいこと」や「個性」を問われ、戸惑った。

 「AIに奪われない仕事を」「終身雇用は昔の話。年金ももらえない」「ベンチャーはリスクが高い」

 矛盾だらけの大人たちの言葉は、まるで「脅し」のようだ。正直、「え?」と思う。でも、就活セミナーで聞いた言葉が耳に残る。「大人に反抗したら、それはダメです」

 大学に行けない日も増えた。大好きな絵もしばらく描けていない。他者と自分を比べ続けることの息苦しさは隠せない。「個性を出せ、といわれても、全員同じスーツで、人事の人は見分けがつくのでしょうか」。焦りと不安の中、インターンの応募を続けている。

岐路にある私たちの社会。かつて炭鉱でいち早く異変を知らせたカナリアのように、危機や転換点に直面する人たちがいます。各分野を追ってきた記者がいま一番伝えたい現場を訪ね、人々の思いをルポします。まずは大人からのプレッシャーに立ちすくむ若者たちの言葉に耳を傾けました。

■「その会社は年収見込めない」…

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