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 「くまのパディントン」や「うさこちゃん」シリーズの翻訳で知られる児童文学者の松岡享子(きょうこ)さん(84)は、1973年にエッセー「サンタクロースの部屋」を朝日新聞に寄稿するなど、子どもがサンタの存在を信じることの大切さを説いてきました。松岡さんにとってのクリスマスの思い出を聞きました。

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 クリスマスは元々、宗教的な意味合いの強いものですが、日本でのクリスマスは宗教的なものではほとんどなくなっています。ただ、誰かのために贈り物をあげるとか、喜ぶことを考えるとか、そういうきっかけを作るという意味ではとても良い機会だと思っています。

 もう半世紀前の話ですが、私は日本の大学を卒業後、アメリカに渡り大学院で勉強していました。当時、寮に入っていて毎日のように日本に手紙を書いてたんですね。その手紙を母が取っておいてくれていて、今年の夏初めて出してみたらクリスマスのことが書いてありました。

 90人ぐらいが住んでいる女子寮だったんですが、一人一人に郵便受けがありまして、クリスマスが近くなった頃、そこにメモが入っていました。そこには「あなたの『バディ』は誰それさんです」って書いてありまして。「その日からクリスマスの間に、そのバディ(相棒)に気づかれないように何かいいことをしてください」ともありました。

 素敵でしょう?

 そのバディは全然顔も知らない人だったのですが、その人のために詩を書いて届けたと私の手紙に書いてありました。手紙を読むまで、すっかり忘れてしまっていたんですけどね。

 そしてクリスマス休暇の前にちょっとしたパーティーがあって、その時に初めてそのバディと顔を合わせる。そんなことがありました。

 やはり世の中が平和であってほしいと願ったり、誰か自分以外の人のため何か役立つことをしてあげたいと思ったり。クリスマスはそういうきっかけを作る季節。だからキリスト教徒の少ない日本でも定着したのではないかな、と思っています。(聞き手・日高奈緒

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 まつおか・きょうこ 翻訳家、児童文学作家。大学卒業後に渡米。大学院で児童図書館学を学び、ボルティモア市の図書館に勤務。帰国後に開いた家庭文庫が東京子ども図書館(中野区)の母体の一つとなる。現在、同館名誉理事長。著書に絵本「とこちゃんはどこ」(福音館書店)、翻訳に「くまのコールテンくん」(偕成社)など多数。