【動画】映画「鉄道員」のロケ地になったJR根室線の幾寅駅=井上潜撮影
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 高倉健さん主演の映画でも有名な浅田次郎さんの小説『鉄道員(ぽっぽや)』。主人公が駅長を務める作中のローカル線同様に、映画の撮影地になった実在の駅も、廃線の危機にある。映画と鉄道を愛する記者が北海道の現地を訪ね、「乗り鉄」として知られる六角精児さんにも話を聞いた。

列車が来ない駅

 やはり、違和感があった。

 『鉄道員』の映画版が撮影された幾寅(いくとら)駅(北海道南富良野町)に、バスで到着したのだ。3年前の台風被害で幾寅駅を含むJR根室線の一部区間が不通になり、ずっとバスが代行運転している。鉄道員一筋の主人公、佐藤乙松が見たらどう思うだろうか?

 乙松は架空のローカル線、幌舞(ほろまい)線・幌舞駅の駅長。妻に先立たれ、娘は幼いころに病で亡くした。定年を迎える年の正月に、奇跡が訪れる。

 『鉄道員』は泣かせる小説だ。刊行された1997年は不況のまっただ中。仕事一筋の価値観が大きく揺らいだ。だからこそ、娘や妻の死んだ日にも駅に立った乙松の生き方と、こんな一節に、とりわけ男たちは涙したのだろう。「ポッポヤはどんなときだって涙のかわりに笛を吹き、げんこのかわりに旗を振り、大声でわめくかわりに、喚呼の裏声を絞らなければならないのだった」

 物語の背景として語られるのは廃線の問題だ。作中の幌舞線も、乙松の定年と同じ年に廃線が決まっていた。かつて炭鉱で栄えた町も、今は閉山と過疎で、乗る人はほとんどいない――。

「なくなると健さんも……」

 これは北海道のローカル線の現実でもある。映画のロケ地、幾寅駅にも同じことが起きている。現在の不通の原因は台風被害なのだが、JR北海道は幾寅駅を含む根室線の富良野―新得(しんとく)間の81.7キロを「JR単独では維持困難」として、廃線にしてバスに転換する提案をしているのだ。

 地元は「災害復旧、路線維持」の立場だ。南富良野町企画課の加藤賢一課長補佐(51)は「通学の子どもたちが乗るので、バスより定時性・安全性に優れている鉄道を残していただきたい」と要望する。

 「鉄道というのは線路がつなが…

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