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連載「共生とは やまゆり園事件から」:1

 重い障害のある入所者19人の命が奪われたやまゆり園事件。「ともに生きる」とは、どういうことなのか。事件が突きつけた問いを、被告の裁判が始まるのを機に改めて考えます。

 「仕事は皆勤で、有休を使って楽しみたい。仲間との活動にも全部出る!」。知的障害のある宮下愛さん(33)は、笑顔で言った。

 昨年12月、堺市内にある地域活動支援センターの一室。「1年後はどんな暮らしをしていますか?」と相談支援専門員の左古久代さん(68)に聞かれた時のことだ。

 自分の強み、今の暮らし、こうありたい将来の自分、そのために必要なこと、困っていること。「わたしの設計図」というワークブックに沿って五つの問いに答える宮下さんの言葉を、左古さんが書き込む。宮下さんが自分の思いで物事を決め、希望する暮らしにつなげる「意思決定」。そのための支援が始まって6年余りになる。左古さんは「『そんな思いがあったの?』という発見と気づきの連続です」と言う。

 一人暮らしをする宮下さんが支援を受け始めたのは2013年。左古さんの問いかけに「何をしたらいいかわからない」「楽しみが見つからない」「ヘルパーにしてほしいことを言えない」としか答えられなかった。でも、あなたのいいところは?と聞かれると「やさしい」「約束を守る」。意思決定の原動力になる強みが引き出されていった。

 関わりのある人との関係図を左古さんと一緒に書いた。当時パートで勤めていた介護施設の職員、家事を手伝ってくれるヘルパー、訪問看護師、役所職員、民生委員、なじみの飲食店のママ、母、姉、友人。「つながってる。1人じゃない」と思えた。知的障害のある仲間の会にも参加するようになった。

 「もっと責任のある仕事をしたい」。その思いが明確になったのは18年秋ごろ。職を転々とした後、職業訓練校に「新しい技術を身につけて新しい仕事を探したい」と通っていた時のことだ。8カ月間の訓練を経て昨年6月、念願の正規職についた。病院で医療器材の洗浄などをする担当だ。

 「今は自分の思いを言ってもいいんやって思える。支えてくれる人がいるから」

 仲間と一緒に福祉サービスの利用法や障害者の権利をわかりやすく解説した冊子を作り、障害者が集う世界会議に参加するという思いもかなえた。「ひとの役に立つのがうれしい」。いま使っている意思決定支援のワークブックは、宮下さんも関わり作成したものだ。

 知的障害者は何もわからない。意思があるのか。そんな見方に、宮下さんは「それは思い込み。会話ができない重い障害者も、表情や、その人に合った道具を使って意思を伝えることはできる」と話す。あの事件の被告にも同じような思い込みがあったのではと感じている。宮下さんの障害程度は「重度」と判定されている。

 「私にはいっぱい思いはあるけ…

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