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 自転車のトラック競技で五輪出場を競う「強化指定選手」の中で最年長、34歳。

 鳥取県琴浦町出身の河端朋之さんは2年前、オランダで開かれた世界選手権・男子ケイリンで2位になり、日本人として25年ぶりのメダルを獲得した。一躍注目され、東京五輪出場が現実味を帯びた。が、昨年は国際試合で思うような結果が出なかった。遅咲きの苦労人は、しかし動じない。

 「まじピンチ」

 大きな口を開けて苦境を笑い飛ばし、いまは五輪内定の選考材料になる2月からの世界選手権だけを見据える。ためてためて、最後の1周に勝負をかける――。ケイリンさながらに選考レースを勝ち抜くつもりだ。

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 中学までは陸上の短距離選手だった。高校でも続けようと、鳥取県立倉吉工業高(現・倉吉総合産業高)に合格するとさっそく陸上部の見学へ。しかし、「あまりにもレベルが高い」と断念。たまたま自転車部の顧問だったクラスの担任から「高校で競技を始める人も多い。今からでも日本一を目指せるぞ」と声をかけられて入部した。

 競技用自転車に初めて乗った印象は「速っ」。その軽さやスピード感に驚いた。吹雪の日に背中から湯気が上がるほど練習に没頭した。2年のときから指導した倉吉総合産業高教諭の福井敬司さん(49)は語る。「教えたことを正しく理解して、すぐに自分のものにできる選手」。そして「とにかくポジティブ」。

 卒業後、母校で福井さんの実習助手などを務めながら迎えた2007年の国体で、ケイリンより距離が短いスプリントで優勝。高校時代につかめなかった日本一の座を手にした。

 前の選手にくっつき、いかに風の抵抗を受けないか、その中でいつスパートをかけるか。展開のうまさが勝負を分ける自転車のトラック競技。「テクニックさえ身につければ、日本一になれる日が来ると思っていた」と語る福井さんの予想は当たった。

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 恩師の導きは続く。

 26歳のとき、福井さんらに誘われて将来のオリンピック選手を発掘する大会「チャレンジ・ザ・オリンピック」のタイムトライアルに挑戦。主催する日本自転車競技連盟の目にとまり、ナショナルチームの練習に参加し始めた。

 国内トップ選手たちと競い合い、アジアの大会でメダルを獲得するまで成長した。同時に、自転車競技が盛んで体格に勝る欧米選手の壁を感じるようにもなった。

 そんなとき、ナショナルチームのヘッドコーチに就任したフランス人の言葉がスッと胸に入ってきた。「日本人はもっと自信を持つことが大事だ」

 身長170センチと引け目を感じていた小柄な体も、実は空気抵抗が小さくて逆に有利じゃないのか。空想するだけでなく、トレーニングに打ち込んだ。実際、ペダルに加わる力の大きさを測定する最新の装置で、世界の選手に劣らない数値が出るようになった。取り戻したポジティブさが2年前の世界選手権2位につながった。

 「もう少しで手が届くものはつかんでしまいたくなる」。日本一の座も世界選手権のメダルも少し遅れはしたが、つかみ取ってきた。その繰り返しでここまで来た。

 いま、東京五輪の会場でもある伊豆ベロドローム(静岡県伊豆市)で強化指定選手のライバルたちと汗を流す。五輪出場への扉が目の前にある。(宮城奈々)

 かわばた・ともゆき 1985年、鳥取県琴浦町生まれ。2012年の全日本選手権でケイリンなど3冠を達成。15年、アジア選手権・スプリントで優勝。18年の世界選手権・ケイリンで2位。オフの日は伊豆の温泉をめぐっている。