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 2018年の冬。空港に降り立った池田真衣さん(26)の足元は、おろしたての紺色のスニーカーだった。

 二度と来ることはないだろうと、いったんは後にした東京。今度は自分の足で歩き、行きたいところに行きたい。「そのためにはヒールじゃだめ」。そんな真衣さんに、「これくらいしかできないから」と母が買ってくれた。

 目指したのは西武新宿線新井薬師前駅から徒歩5分、商店街の中の雑居ビル。2階の店舗では、喫茶店の開業を控えた池田達也さん(25)が準備に追われていた。棚にコーヒーカップが並び、キッチンには備品がそろっている。

 このときの真衣さんは、食事も睡眠もままならない状態だった。やつれた体をキャリーケースに引っ張られるようにして上京してきた。これからここで働く。「桜を見るまでは、東京で頑張ろう」。心に決めた。

     ◇

 幼い頃から、テレビやインターネットで見る「便利で楽しそうな東京」に憧れた。高校卒業後、鹿児島県から都内の看護専門学校へ。足が太く見えたら嫌だから、足元はいつもヒール。ロングヘアを巻き、休日は友人と渋谷で食事や買い物を楽しんだ。

 就職した美容クリニックは急速に営業を拡大した。就職2年目にリーダー、3年目で副主任に昇格。毎日、遠方の違う店舗にヘルプに入った。心身はすり減っていった。

 それでも、仕事を辞めては生きていけないと、「ゾンビみたいに」仕事に通った。うつ病と診断された日、職場に行き、診断書と辞表を出した。自宅に家具を残したまま、飛行機に飛び乗り、実家に帰った。

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 大学生だった達也さんもその頃、進路に悩む日々を送っていた。

 「高校を出たら何となく東京」…

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