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 27日に開幕した全国高校ラグビー大会に、奈良から19歳のラガーマンが出場する。御所実のプロップ島田彪雅(ひゅうが)選手(3年)。2度目の高校入学が、一度あきらめた花園の舞台につながった。「一番の恩返しは日本一になること」。母と恩師に誓う高校最後の大会に挑む。

 大阪市出身で、小学1年生でラグビーを始めた。きっかけは母のすすめ。母はタクシー運転手として働き、女手一つで家庭を支えながら、試合には必ず駆けつけてくれた。

 中学卒業後、強豪校に入学。憧れの先輩を追って飛び込んだ場所だったが、ラグビー部の雰囲気になじめず、練習を休みがちになって部から離れた。

 1年冬に退学を決め、運送会社でアルバイトを始めた。ラグビーとは縁を切ったつもりだったが、中学のチームメートたちから届く連絡に心が揺れた。「もう一回、一緒にラグビーやろう」。中学のラグビー部の顧問にすすめられ、御所実の竹田寛行監督のもとを訪れた。

 竹田監督は開口一番、「ラグビーやらんか。入学せんか」。どきっとした。「何言うてんの。これから入学って学年が変わってしまうし、お金だって……」。でも、また楽しくラグビーができるかもと思うと、ノーと言えず、何も言葉を返せなかった。

 その場で母に電話をかけた。「とりあえず入ってみて、嫌ならやめたらいい。お金とか気にしないで」。母は体調不良で入院していたときも、外出届を取って試合を見に来てくれた。応援してくれる母の気持ちに応えたくなった。「おかんのためにもラグビーやりたい」。御所実に入学した。

 部の寮に入り、年下の同級生との環境に慣れるのは、最初は難しかった。悩んだときは、竹田監督が一緒にお風呂に入って話を聞いてくれた。冷たい水を掛け合ってふざけたり、「親分」と愛称をつけてくれたり。「お父さんみたいだろうなって思う。今があるのは、竹田先生が誘ってくれて、支えてくださったおかげ」

 寮生活で母への感謝も膨らんだ。家に帰れば机いっぱいに並ぶ食事、きれいに洗濯される服。「自分の身の回りのことだけでも大変なのに、家族のためにこんなにしてくれてたなんて」。練習にもより気持ちが入った。

 大会前、社会人ラグビーのトップリーグで、日本代表選手も数多く所属するパナソニックとの契約が決まった。パナソニックへの高卒での加入は異例という。

 ほかの高校生とはちょっと違う、平坦(へいたん)ではない道のりを歩めたのは、母と竹田監督がいたから。「感謝を結果で示したい。おかんにはちゃんと言葉でも。竹田先生には、日本一になった瞬間、僕が一番に抱きつきますよ」(平田瑛美)