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【アピタル+】患者を生きる・職場で「脊髄性筋萎縮症」

 運動神経細胞が変性して筋肉が徐々に萎縮していく「脊髄(せきずい)性筋萎縮症(SMA)」。長らく症状の緩和やQOL(生活の質)を下げないためのケアしかできませんでしたが、2017年に初めて治療薬が登場しました。SMAに詳しい、東京女子医大の斎藤加代子名誉教授(67)に話を聞きました。

拡大する写真・図版斎藤加代子・東京女子医大名誉教授

――脊髄性筋萎縮症(SMA)とはどんな病気ですか。

 運動神経細胞が働くのに必要なたんぱく質「SMN」が十分に作られないために神経細胞が変性し、筋肉が徐々に変性していく病気です。発症する年齢や症状の重症度によって、大きく四つの型に分類されます。

 発症年齢が若いほど、症状は重くなります。一番重いⅠ型には、とくに重症のⅠa型と、やや軽いⅠb型があります。Ⅰa型の場合、生後半年までに症状が出ることが多いです。

――どのような症状ですか。

 Ⅰ型の場合、母乳やミルクの吸い方が弱い、のみこみがよくできない、筋肉がマシュマロのようにふにゃふにゃしている、首がすわらないといった症状がみられます。月齢を重ねても、支えなしに座るのは難しいです。

 また、筋肉の萎縮が進むと、呼吸に必要な横隔膜などを動かすのに必要な筋力が低下して呼吸ができなくなります。そうなると、気管切開して人工呼吸器をつける必要があります。

 Ⅲ型やⅣ型のように、ある程度成長してから発症したり成人した後に発症したりする型の患者さんは、発症前にできていた、立ったり歩いたりという運動がだんだんできなくなっていきます。

――どれぐらい患者はいるのですか。

 難病情報センターによれば、人口10万人あたりに1~2人とされています。厚生労働省研究班の疫学調査では、出生2万人あたり1人の頻度でした。

――原因は?

 乳児期から小児期に発生するⅠ型やⅡ型は主に、SMNの基になる遺伝子に変異があり、親から子に遺伝するタイプです。「常染色劣性遺伝」と言い、両親がこの変異を持っていると、生まれる子どもには4分の1の確率で遺伝して発症します。

治験中の薬も

――治療は?

 SMAが初めて報告されたのは19世紀末ですが、それから約120年間にわたり、治療薬がありませんでした。そのため、症状を緩和し、QOL(生活の質)を下げないためのケアが中心でした。人工呼吸器で呼吸を補助する、車いすを使う、関節が硬くならないようにリハビリをする、といったケアです。

 2017年に初めて、治療薬「スピンラザ」が承認されました。定期的に脊髄腔内(くうない)に注射する薬です。

 承認前の臨床試験(治験)では、生後6カ月までに発症した乳児の4割が、首がすわる、自分でおすわりができるようになるなど運動機能が改善しました。

 この薬の登場により、今後はリハビリの内容も変わってくると思います。これまでは、筋肉の拘縮や関節が固まる、背骨が曲がるといった症状が出るのを遅らせるためのリハビリが主体でしたが、今後は、もう少し積極的に筋力をつけることも考慮したリハビリをすると、治療薬の効果をより高めることができるかもしれません。医学的に検討していく必要があると思います。

――スピンラザ以外には治療薬はないのですか。

 米国では、1度の投与でいい、遺伝子治療が承認されています。国内でも治験中、承認申請中です。

 また、国内外でのみ薬の治験も行われています。

――治療はなるべく早く始めた方がいいのでしょうか?

 完全に変性してしまっている運動神経細胞は、治療薬を投与しても元に戻らない可能性があるので、変性する前の運動神経細胞がなるべく残っているうちに治療を始める方が望ましいです。

 治療ができるようになったので、今後は、生まれたばかりの赤ちゃんにする新生児スクリーニングの項目の一つに、SMAを入れてほしいです。そうすれば、症状が出る前に治療を始めることができます。

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<アピタル:患者を生きる・職場で>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・大岩ゆり)