[PR]

 2018年7月の西日本豪雨で緊急放流をした愛媛県の野村ダム(西予(せいよ)市)と鹿野川(かのがわ)ダム(大洲(おおず)市)をめぐり、事前の放流を十分に行わず、大量放流で浸水被害を拡大させたなどとして、流域の被災住民や犠牲者の遺族らが31日、ダムを管理する国や両市を相手取り、総額約8600万円の損害賠償を求める訴えを松山地裁に起こした。

 二つのダムは、いずれも愛媛県内を流れる肱川(ひじかわ)にあり、国土交通省四国地方整備局が管理している。18年7月7日朝、豪雨によって満水に近づき、流れ込む雨水とほぼ同量を放出する「異常洪水時防災操作(緊急放流)」を実施。その後、下流域の西予市と大洲市で計約3500戸が浸水し、8人が亡くなった。

 訴えたのは、西予市で自宅が浸水して亡くなった夫婦の遺族2人と、大洲市で自宅や事務所が浸水した住民6人。訴状では、国は大雨でダムへの流入量が増えるのを予想できたのに事前放流を十分にせず、ダムの容量を確保しなかったと指摘。その結果、ダムが満水に近づき、それまでの放流量をはるかに超える水量を一気に放流したため、下流域に甚大な浸水被害をもたらした、としている。

 西予市と大洲市は、洪水の被害想定や緊急放流の危険性について、住民への周知が不十分だったと原告側は主張。特に大洲市は緊急放流の情報を住民に伝えたのが放流の5分前で、被害を拡大させたとしている。

 ダムを管理する国土交通省四国地方整備局は「提訴の事実を確認できておらず、コメントできない。引き続き肱川の治水安全の向上に努める」とし、西予市と大洲市も、訴状の内容を把握していないとして「回答は控える」とした。(照井琢見)