[PR]

 イラン国営テレビは8日未明(日本時間同日朝)、イランのイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)が米軍に殺害された報復として、革命防衛隊が米軍の駐留するイラクの基地に対してミサイル攻撃したと報じた。作戦名は「殉教者ソレイマニ」で、複数のイラク人に負傷者が出ている模様。イランが米軍への直接的な軍事攻撃に踏み切ったことで、米側の被害次第では両国の報復合戦がさらに激化する恐れがある。

 国営テレビによると、革命防衛隊は声明で「米国によるソレイマニ司令官へのテロ行為の報復とし、(イラクの)アサド空軍基地に数十の地対地ミサイルを発射し、着弾した」と説明。「『殉教者ソレイマニ』と名付けられた作戦が成功裏に行われた」としている。革命防衛隊に近い政府系タスニム通信は、「攻撃は2回行われた」と報じた。イラン側は、最高指導者ハメネイ師が「(米国には)厳しい報復が待ち受けている」と述べていた。

 革命防衛隊は声明で「大悪魔の米国に警告する。さらなる攻撃はより痛みを伴う壊滅的な報復をもたらす」などと米国を牽制(けんせい)しつつ、米軍の中東からの撤退を要求。さらに、米国の同盟国の基地がイランへの攻撃に使われるのなら攻撃の対象になるとも警告した。また、革命防衛隊は、米国の同盟国であるイスラエルに対しても「米国の(ソレイマニ司令官殺害という)犯罪と無関係とは見なさない」として、敵対姿勢を鮮明にした。

 米国防総省は「イランがイラク国内の米軍と有志連合軍に対し、十数発以上の弾道ミサイルを発射した。これらのミサイルがイランから発射されたことは明らかで、米軍と有志連合軍が駐留する少なくとも2カ所のイラク軍基地を標的にした」とする声明を発表した。日本時間の8日午前7時半ごろ、イラク中西部アンバル州にあるイラク軍のアサド空軍基地と、同国北部のクルド人自治区アルビルの基地が標的になったという。アサド基地には、トランプ米大統領が2018年12月に訪問し、駐留米軍を激励していた。

 イラクの地元メディアによると、アサド空軍基地では滑走路に着弾し、戦闘機が破壊されたとの情報もある。また、アルビルでは空港近くにミサイル1発が着弾したが爆発しなかったという。アルビルから約50キロ離れた地点にも着弾したが、負傷者はなかった。

 首都バグダッドでは、政府庁舎や米大使館などが集中する「グリーンゾーン」と呼ばれる地区などで、航空機などが旋回し、警戒しているという。

 米CNNはイラク治安部隊の話として、アサド空軍基地で複数のイラク人の負傷者が出ていると伝えた。一方、米政府当局者はCNNの取材に対し、「現段階では米国人の負傷者についての報告は受けていない」と語った。

 トランプ米大統領はイランの攻撃後、「すべて順調だ。犠牲や損害を評価しているところだが、今のところ、非常にうまくいっている。米国は世界で最も強力で装備が整った軍を持っている。明日の朝に声明を発表する」とツイート。4日には「イランが米国人や米国の資産を攻撃すれば、イランの52カ所をとてもすばやく、とても激しく攻撃する」と主張していたが、ツイートでは米国のさらなる反撃には触れなかった。米軍に多くの人的被害が出た場合は、米国がさらに反撃し、中東で軍事的な緊張が高まることが懸念されていた。

 一方、イランのザリフ外相も8日、自身のツイッターで、国連憲章の自衛権に基づいて相応の措置をとったとしたうえで、「我々は事態の悪化や戦争を求めていない」とつづった。

 3日に、ソレイマニ司令官がイラクのバグダッド空港近くで米軍によって殺害されて以来、イランでは報復論が強まっていた。革命防衛隊のサラミ総司令官は7日にイラン南東部のソレイマニ司令官の生まれ故郷であった葬儀で「我々は厳しく、(米国が)後悔するような報復をする」と語っていた。

 ソレイマニ司令官は、革命防衛隊で対外工作を担う「コッズ部隊」を20年以上率いてきた司令官。イラクやシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦に参加し、大きな役割を果たしたことからイランでは「ISがイランに近づくのを食い止めた」として国民的な英雄として認知されている。(テヘラン=杉崎慎弥、ワシントン=渡辺丘、リヤド=高野裕介)

   ◇

 「米軍が駐留するイラクのアサド空軍基地に対し、イランの革命防衛隊が報復攻撃をしたと伝えるイラン国営通信のウェブサイトの写真」と説明した写真を掲載しましたが、8日に発射されたものではありませんでした。ウェブサイトにはいつ発射された写真かは明示されておらず、後日、同通信に確認したところ、過去のミサイル発射の様子を資料的に掲載したものであることが分かりました。この記事についていた写真を削除しました。