【動画】天皇や皇族の「人権」とは? 国民とは違う?動画で解説します。
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 30年ぶりに新天皇が即位した昨年、日本はお祝いムードに沸きました。ただ、皇室の人たち一人一人の生き方を見てみると、プライバシーが限られ、結婚や発言にも制約があるなど、「不自由さ」も目につきます。2016年には、天皇陛下(当時)が自らの退位を語ることの是非も議論になりました。天皇や皇族の「人権」とは? 国民とは違う? 改元を機に考えてみませんか。

制度上の統制 緩やか 森暢平・成城大教授(日本近現代史)

 象徴天皇制は、天皇の権限を抑制することで国民の人権を守るという構えになっています。だから「皇室の人たちの人権」を論ずると、どうしても矛盾が出てきてしまいます。

 皇室をめぐる現在の規定は明治憲法体制下よりずっとあいまいになっているため、なおさらです。戦前の旧皇室典範は大日本帝国憲法と同格で、その下に皇族会議令や皇室祭祀(さいし)令など皇室の法律ともいうべき皇室令がいくつも並んでいました。それにより天皇や皇族の権威を高めると同時に、皇室を管理していたのです。戦後、皇室令はすべて廃止され、皇室典範の規定も縮小。法制度による皇室の統制は、戦前よりむしろゆるくなった側面はあります。

 実際、1960年代前半までは皇族はラジオ・テレビで発言するなど割と自由な言動をしていました。しかし国民の生活水準が上がって皇室の示す家族像が手に届くようになると、皇室に「権威」や「品位」が求められるようになりました。それにより現在も皇室の人たちは「あるべき姿」にとらわれ、ありのままの自分を表に出せないでいます。

 日常生活や移動の自由が制限されているのは、警備や側近奉仕のあり方がなかなか変えられない点にあると思います。これを合理化して皇族の「自由」の範囲を広げれば、結果的に税金からまかなう皇室予算も減り、皇室にも国民にもプラスの面が大きいと思います。

皇族 基本的人権ある 高見勝利・上智大名誉教授(憲法学)

 すべての国民は憲法で、「幸福を追求する権利」や「結婚の自由」「職業を選ぶ自由」「表現の自由」、性別や出自で差別されない、などの基本的人権が保障されています。18歳以上の成人になれば、参政権も持ちます。

 では皇室の人たちに、こうした「人権」はあるのでしょうか。この問いを考えるには、彼らがそもそも「国民」なのかがカギになります。

 まず、日本に定住する国家構成員という広いくくりの「日本国民」(憲法10条)には、天皇も皇族も、私たちと同じように含まれていると考えられます。そのため憲法が保障する基本的人権は有しているというのが前提です。

 ただ天皇については、「国の象徴」(同1条)であり、政治の大もとを決める「国民(主権者)」からは除かれます。またその地位は「世襲」(同2条)で、「国政に関する権能を有しない」(同4条)とされているため、職業選択や政治参加などの権利は認められないと解されています。

 実はそのほかの皇族については、現行法上は一般国民と明確に区別する規定はほとんどありません。あるのは、「皇室典範」で男女平等や結婚、皇室離脱などに制限をかけた規定と、一部の財産法ぐらい。参政権についても、「戸籍を持たない者は当分の間、停止する」という公職選挙法付則がその行使の妨げになりそうだ、とされているだけです。

 しかし現在は、皇族の権利や自由は大きく制約されているのが実態です。「皇族という特別な地位にあり、天皇と同じように制限されるべきだ」という考え方が市民の間で根強かったためと思います。

 かつて昭和天皇の弟宮たちは、天皇は皇居と別に私邸を持って公務で通うようにしては、と言ったそうです。それぐらい公私や家族は分け、国民に近い存在になれ、ということです。その方が、皇室の人たちの「人権」も守られ、持続可能な制度になると私も思います。(聞き手・藤田さつき)

皇室の「人権」をめぐる動き

1946年 戦前は「現人神(あらひとがみ)」とされた昭和天皇が「人間宣言」。日本国憲法が公布され、1条で天皇は「象徴」に

三笠宮崇仁親王(昭和天皇の末弟)が、皇室典範についての意見書を枢密院に提出。天皇が自らの譲位を皇室会議に発議できるようにすることを提案。内閣が開戦など重要事について自らの意思と異なる決定をし、外国に対して「全日本国を代表する」立場として責任や苦痛を強く感じる場合を想定していた。

  47年 新皇室典範、皇室経済法公布

  58年 正田美智子さん(現上皇后)と皇太子明仁さま(現上皇)の婚約発表、翌年に結婚。皇族・華族出身でない皇太子妃は初。「ミッチー・ブーム」が起きる

  82年 「ヒゲの殿下」の愛称で知られた寛仁(ともひと)親王(現上皇のいとこ)が皇籍離脱の希望を宮内庁に申し出るが、かなわず

  85 皇太子徳仁(なるひと)さま(現天皇)が英国留学後の会見で「留学で得た、自分でモノを考え、決め、行動に移す態度は今後も続けていきたい」と発言

  89年 昭和天皇死去、平成に

  93年 外交官の小和田雅子さん(現皇后)と皇太子徳仁(なるひと)さま(現天皇)が結婚。美智子さまをめぐる報道が週刊誌などで過熱。美智子さまは一時言葉が出なくなった

  99年 雅子さまの妊娠を初期段階で本紙などが報道、その後流産

2001年 雅子さまが愛子さま出産

  04年 徳仁さまが会見で、「雅子のキャリアや人格を否定するような動きがあった」と発言

  05年 小泉純一郎首相(当時)の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が、男女を問わず天皇直系の「第1子優先」で皇位を継承するのが適当と結論づける報告書

  06年 秋篠宮妃紀子さまが悠仁(ひさひと)さまを出産。秋篠宮さま以来41年ぶりの男子皇族誕生

  12年 自民党が発表した憲法改正原案で、天皇を「元首」と位置づける

  16年 現上皇が退位の願いをにじませるお気持ち表明

  18年 前年に婚約内定を発表した眞子さまと小室圭さんの結婚が延期に

  19年 佳子さまが眞子さまの結婚について、「姉の一個人としての希望がかなう形になってほしい」「姉の件に限らず、以前から私が感じていたことですが、メディア等の情報を受け止める際に、情報の信頼性や情報発信の意図などをよく考えることが大切だと思っています」と質問に文書で回答

明仁天皇が退位、令和に

税金で暮らすなら 干渉しなくても

 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声を紹介します。

 

●税金で暮らす以上制限ある

 判断の基準は、税金で生活しているか否かだと思う。税金で生活している以上、国民が望む範囲で制限があっても仕方がない。ただし、国民が望む制限を時代とともに見直す必要はある。また、そこから離脱する自由は尊重するべきだと思う。もしくは、税金で生活をするという仕組みを変えれば良い。(東京都・30代女性)

●人として生き方考える時

 皇室は、とても神聖なものであると同時に、みんなの手本となることを求められていると思います。でも、皇室に生まれたのは自分の意志ではないし、いろいろなものを選択する権利はあってしかるべきだと思います。皇室の継続も課題かもしれませんが、一人の人間としてどう生活していくかについても、みんなで考えるべきではないでしょうか。(神奈川県・30代女性)

●「人は平等」と言えないまま

 民主主義の時代に、生まれながらにして身分が保障されている立場であるのがおかしい。だから、それなりに人権やプライバシーについて制限があるのは当然。なので、一方で皇室を離れる自由を与えて、人間らしく生きられる選択もできるようにしてやったほうが良い。生まれながらにして、高い身分も、人権・プライバシーも保障される、というのでは、時代錯誤も甚だしいと考える。皇室があるがゆえに、「人は生まれながらに皆平等なのだ」と子供に教えられずに今に至っている。(青森県・60代男性)

●皇室離脱の制度整えては

 私は皇族を離れる自由を保障するべきだと考える。本来なら皇族も国民も関係なく自由やプライバシーが保障されるべきであるが、憲法でも位置付けられているように日本国の象徴であり、それに反するようなことはするべきではない。しかし、人間は生まれる家を選ぶことができないために、皇族に生まれたが皇族の公務や役割といった制約を受けたくないといった場合もおこりえる。そのため、個人の判断で皇族を離れるか判断できるような制度を整えるべきだと思う。もちろん皇族の人数が減るという問題も発生しますが、今は個人の自由やプライバシーが優先される時代。時代に合わせて皇族のあり方も変わっていかなければならないと思う。(兵庫県・10代男性)

●天皇制守るなら自由に制約

 日本国内でたった一つの家族に象徴の役割を押し付けることを全国民が強いている天皇制がある以上、皇族になんら自由はないと思う。その家族を不自由な生き方から解放するのならば天皇制を廃止するしかないと思う。国民が天皇制の維持を求めるのならば皇族方に人権や個人の生き方の自由は認められないのでは。(滋賀県・40代男性)

●女性天皇を認めるべきだ

 女性天皇を早く認めるべきです。そうなれば個人の生き方の自由、たとえば皇族を離れる自由や男子を産まなければならないプレッシャーもなくなります。配偶者になる方もみつけやすくなるのではと思います。皇族男子も皇籍離脱を認めても良いと思います。(東京都・50代女性)

●犠牲的役割に疑問

 男女平等論には大いに賛成だが女性天皇にはどうしても賛成できないです。その理由は、もし結婚でしか実現しないことだとしても、男女不均衡だとしても、皇族への抑圧や特に女性の出産プレッシャー等疑問点が多いので、機会があるのであれば逃げて欲しい、と思ってしまうからです。基本的人権を保障せず象徴として人身御供的な役割を生涯果たさせることに税金を投与し続けるのは、一般市民の私にとって一体何のメリットがあるのだろう、と思います。(東京都・20代女性)

●「自分だったら」想像したい

 皇族相手に「自分だったら」などと共感を寄せるのはおこがましい…はずだが、そうした私たちの恐縮が「人」から権利を奪うのではないか。「自分だったら」あのような境遇にいたくない、そういう想像力を持てない社会はそもそも嫌だ。(神奈川県・20代男性)

●特権階級に人権はナンセンス

 人権の考えかたは、あくまで抑圧されている側の権利を守るために、運動やたたかいの中で確立されてきたものであるから、特権階級の人権なんて考えることがナンセンス。皇族に人権はない。(埼玉県・40代男性)

●公務以外は干渉しなくても

 古きよき皇室が日本にあるというのは日本人の誇りです。しかし一方で昔のスタイルの日本人像を今でも求めているということではありません。ご公務以外の部分は触れる必要がないと思います。(埼玉県・40代女性)

●出生で責任背負うのはおかしい

 私は皇族の方々を尊敬しています。感謝しています。その上で申し上げたい。皇族に生まれてしまったがために、ただそれだけの理由で、身分と責任とを背負わされてしまうのはおかしいと思います。自らが望む望まないに関わらず与えられるものとしてはあまりに大きすぎます。脈々と続いてきている(らしい)ことを理由に尊重して継続させねばとする考え方には賛成できません。天皇制がなくなることを願います。(北海道・20代男性)

●バッシング許されない

 皇室の人権はほぼないと言っていい。子供を作るために、「ふさわしい」人と結婚し、男性が生まれるまで、生まれなくても、生まれたあとも騒がれ続ける。皇室離脱を前提とする女性ですら、ふさわしくないとみなされた人間との結婚の自由もなく、ひたすらバッシングが続くのが現状。人間としてではなく皇族すなわち国と国民の奴隷として生きることを要求されている。許されることではない。(奈良県・30代その他)

●海外のように個性出して

 海外の王室のようにもっと個人、個性、というものを出してもいいのではないでしょうか。少しぐらい世間からの雑音は無視してもいいと思います。(海外・50代女性)

●伝統残す博物館の館長に

 天皇家は1000年以上前から伝わる日本の伝統として、博物館的に残すので良いと思います。天皇はその館長として生活の保障をすれば良いでしょう。それに伴う儀式は執り行っていただき、それが日本国と日本国民の安寧を願うものであれば、その費用は国費から支出するので良いと思います。それ以上でも以下でもない立場にして、日本国民としての権利を保障されて、ごく普通の日本国民として暮らされるのが良いと思います。(大阪府・50代女性)

●プライバシーは尊重すべきだ

 皇室典範によって皇族という身分が決められている以上、また、皇室の予算が全て税金で賄われている以上皇族は労働者ではないので個人の自由に制限があるのは仕方ないと思われます。ただ、一人の人間としてのプライバシーは人間の尊厳として尊重されるべきだとおもいます。(静岡県・60代女性)

●人権制限は皇室維持妨げる

皇族の方の人権があまりにも制限されている現状が、皇室の維持を危険にさらしていると感じる。令和の時代にあの環境に嫁いで男を産むプレッシャーをかけられたい人はほとんどいないだろう。女性・女系天皇を早期に認めることで、皇族の人権を多少認めることができ、継続性も担保できると思う。男系男子にこだわっていてはすぐに継承者がいなくなる。若い皇族が多い今のうちに変えるべきと考える。(佐賀県・20代男性)

●何でも公にしなくても

 冠婚葬祭、儀式、公務に関わることが報道されると、国民として喜びや哀(かな)しみを感じることはあるけども、流産や結婚まで至らなかった恋愛、病気は伏せてあげてほしい。「乳がんなんだって」とか「借金が原因で別れたらしいよ」、「流産したみたい」なんて会社や友達にでさえ自分の意思と関係なく公にされたらと想像したら嫌ですもん。全人生が全世界に向けて事細かに伝えられるなんて耐えられない。(徳島県・40代女性)

皇族にも「自ら選ぶ自由」を

 折しも英国ではハリー王子夫妻が「王室から距離を置く」と発表し、波紋を呼んでいるとか。日本では皇室の人たちの人権について、あまり議論されてきませんでしたが、今回のアンケートでは多くの人が関心を抱いていることが分かりました。

 「皇室を離れる自由」が認められるべきだと答えた人は約半数。平等原則がベースの現代社会に、生まれながら特別の身分の人たちを残すのが象徴天皇制です。でもせめて「自ら選ぶ自由」を、という思いを感じました。(藤田さつき)

企画・構成は高重治香が担当しました。

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