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 流通大手イオンの経営トップが23年ぶりに交代する。創業家出身の岡田元也社長(68)は、イオンを日本の小売り最大手に育てた立役者。非創業家の副社長にバトンを渡す背景には、成長に陰りが見える現状を打破する狙いがある。アマゾンや楽天にどう対抗するのか。デジタル戦略を担ってきた吉田昭夫新社長(59)の手腕が問われる。

 「ずっと死ぬまではやれませんから、交代は(社長に)なった時から思っていた」「(社長在任が)長くなったのは恥じるばかり」

 岡田氏は10日の記者会見で、23年に及んだ社長の在任期間をこう振り返った。社長交代について社外取締役らと2年ほど議論し、昨年末に吉田氏に交代を打診したという。

 交代のタイミングに「意味はない」としたうえで、「イオンの成長スピードが落ちていて、固定化してきた。近年では大きな統合もない。若い人がもっと学習をして成長する機会を用意するのが私の最後の使命と考えた」と述べた。

 岡田氏は創業者の岡田卓也名誉会長(94)の長男。1997年に社長に就くと、経営不振に陥った中堅スーパーや、ライバルだった大手のマイカルやダイエーなどを次々と傘下に収めた。仏カルフールや米ウォルマートなど外資系スーパーの日本進出への危機感を背景に、積極的な買収戦略で小売業界の再編を主導してきた。

 食品や衣服などを幅広く取りそろえる総合スーパーの集客力の低下を見据えて、専門店を多くテナントに構えるイオンモールの出店にも力を入れてきた。

 岡田氏は代表権のある会長としてグループにとどまる。吉田氏との役割分担については「ほとんどのことは吉田社長(が担う)」としたうえで、「私は長期戦略を中心に、さらなるグループ力を発揮できるようにしていきたい」。創業家出身として、今後どう経営に関与するかが注目される。

 岡田氏の長男の尚也氏(36)は現在、グループ内のスーパーのビオセボン・ジャポンの社長を務めている。将来の世襲について問われた岡田氏は「本人(尚也氏)がどういう風に考えるかもわからないので、なんとも答えようがない」と述べるにとどめた。

 セブン&アイ・ホールディングスとともに「2強」として小売業界を引っ張ってきたイオン。最近はアマゾンに代表されるネット通販が台頭し、リアル店舗には向かい風が吹く。

 総合スーパー事業では苦戦が続く。10日に発表した2019年3~11月期決算では、前年同期に続いて180億円超の営業損失を計上。イオン銀行などの金融事業と、イオンモールなどの不動産開発事業で補う構造が続いている。

 悪い流れを変えるため、昨年11月には英国のネットスーパー運営会社との提携を発表。人工知能(AI)やロボットを使った大規模な配送センターを建て、23年にも新たなネットスーパーを始める。アマゾンや楽天などに対抗する計画だ。

 この提携交渉を担ったのが、デジタル事業担当の吉田氏だった。その手腕について、岡田氏は「長期的な変化の見通しがあり、間違いが許されない多額な投資での決断力、交渉力にたけている」と評価した。

 吉田氏は現状の課題について「客と現場の商品にギャップがある。ギャップがあると客が減り、売り上げが落ちる」と分析。「人口動態、消費行動、地球環境、全ての変化は非常に大きく、しかも速い。さまざまな課題も生まれる。しかし大きなチャンスも生まれる」と述べ、ネットとリアル店舗の融合をめざすとした。(栗林史子、佐藤亜季、土居新平)