息ない大学生に黒いタグ、最後通告の葛藤 軽井沢事故
里見稔
長野県軽井沢町で乗客・乗員41人が死傷したスキーツアーバスの転落事故から、15日で4年を迎える。犠牲になった乗客13人は全員、未来へ羽ばたこうとしていた大学生だった。事故を風化させない、悲惨な事故を防ぎたい――。あの夜、懸命の救助にあたった消防隊員は自問自答を続けている。
2016年1月15日午前2時すぎ。寄せられる情報は断片的だった。「バスが横転」「乗客30~40人でけが人多数」――。とんでもない事故になるかもしれない。そんな悪い予感は的中した。
佐久広域連合消防本部の軽井沢消防署(軽井沢町)で当直勤務だった冨樫伸治隊員(45)は、署内にけたたましく響いた救助事案発生のサイレンで跳び起きた。現場は国道18号碓氷バイパスの入山峠付近。救助車両で5・5キロの一本道を急いだ。
7分で現場に到着。車のライトで道の外側にひしゃげたガードレールが見えた。「崖下とは聞いていないが、まさか」。隊員たちが手持ちの明かりを下に向けると、横転したバスの輪郭が浮かび上がった。フロントガラスは飛び散り、天井は木に衝突して大きくへこんでいた。
とっさに無線で応援を要請した。「想像をはるかに超えている。どうすればいい」。暗闇のなかでの救助は困難を極めた。正確な乗客数もわからず、目の前に見えた人を1人ずつ助けていくことを繰り返した。
崖下から救助されたけが人が…