拡大する写真・図版やけどを負った患者が着用する圧迫帯を作っている石井寛隆さん=愛知県春日井市

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 京都アニメーションの放火事件で、義肢やリハビリ用具製造の「ワールドブレース」(愛知県春日井市)が、外傷ややけどなどで生じるケロイドを防ぐ装具を負傷者の女性に無償提供した。独自に開発した圧迫帯と呼ばれる装具で、義肢装具士の石井寛隆社長(53)は「悲惨な事件に巻き込まれた負傷者を少しでも手助けしたい」と話している。

 圧迫帯は伸縮性があり、患部に着用する。ストッキングよりも少し張りのある圧力が、装着した部位に均一にかかる。包帯に比べて患部への摩擦も少ないという。皮膚が盛り上がるケロイドを適度な圧力で抑える。紫外線をカットして、赤黒いシミができるのを防ぐ効果もあるという。

 石井社長が義肢を納入していた中京病院(名古屋市南区)の医師から、患者のために包帯に代わる装具の開発を依頼された。約10年間かけて改良を重ね、2006年に完成させた。ナイロンを主体に複数の素材を用い、やけどの部位を採寸して、一人一人に合った圧迫帯を作っている。

 火事や熱湯でやけどを負った患者約1千人がこれまで着用したといい、13年に京都府福知山市の花火大会で起きた爆発事故の負傷者にも提供した。爆発事故の被害者家族会の元会長で、負傷した妻と長男が着用した盛本英靖さん(53)は「包帯よりずっと使いやすく、心身ともに救われた。多くの負傷者の方に知ってもらいたい」と話す。

拡大する写真・図版やけどを負った患者が着用する圧迫帯を作っている石井寛隆さん=愛知県春日井市

京アニ事件の負傷者には無償提供

 京アニ放火事件ではスタジオ内にいた33人が重軽傷を負った。負傷者の家族から昨年11月下旬に問い合わせがあり、石井さんは無償提供を申し出た。

 負傷者のもとに自ら出向いて採寸し、患部に合った圧迫帯を作って昨年12月上旬に提供した。一般的な費用は数千円から数万円で、保険適用はない。成人の負傷者は通常数カ月間にわたり、入浴時以外は常時着用してもらうという。

 石井さんは、放火事件の被害者に貢献できないかとずっと考えていた。「何とか順調に回復し、アニメ制作の現場でまた活躍してもらいたい」。京アニ事件の負傷者には連絡があれば無償提供したいという。

 問い合わせはワールドブレース(0568・52・3535)。(吉村治彦)