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倫理

 形式はおおむね昨年通り。設問数は1題増え、37に。

【難易度】やや易化

【全体概観】

 大問4は例年通りだが、小問37は昨年より1題増。形式面では、昨年4題あった6択形式の設問が6題に増えた。クワインおよびノージックは、過去名前だけ一度登場したことがあったが、今回初めて正面から出題された。その他、まだ22歳のマララ・ユスフザイの主張について問われた。イエズス会のロヨラの名が出題されたのも初めてであった。日本思想分野で「共和主義」についての理解が求められたが、近年政治哲学で関心の高まっているキーワードとして、注目できる出題である。日本思想分野では鈴木正三についての知識が求められるなど、多くの受験生が苦しんだものと考えられる。昨年は平均点が5点以上下がったが、今年はそれよりも平均点はやや上がると思われる。

設問別分析

【第1問】青年期・現代社会分野

 例年と同様、青年期と現代社会分野からの出題が中心であった。リード文が会話形式という点も同様。問1ではクワインについて初めて出題された。出題形式としても、読解能力と知識をともに求める新形式であった。また過去に誤答の選択肢として名前だけ一度登場したことのあったノージックが正面から初めて出題された。また問8では国連難民高等弁務官事務所やマララ・ユスフザイについての知識を求める設問があった。

【第2問】源流思想分野

 形式面でも内容面でも伝統を踏襲した形で、とくに目新しいものはなかった。問3は大乗仏教に特化した設問で、「小乗仏教」が自称でない点や南伝仏教と北伝仏教についての知識など、やや細かめの内容が問われた。古代中国思想からの出題が少なく、墨子と孟子についての設問があったほかは、「儒教と仏教」についての問5で朱熹についての選択肢が2つあっただけだった。

【第3問】日本思想分野

 昨年もそうだったが、今年もかつてとは出題テーマが大きく変わっている。問1では源信と空也についての知識が問われ、問2では日本の美意識ということで、西行・吉田兼好・雪舟・九鬼周造が問われた。問5では過去2回だけ問われた鈴木正三についての知識が求められ、その誤答選択肢としても西川如見と細かい人物が挙げられた。また問7では「共和主義」についての知識が求められ、誤答選択肢が「共産主義」だったので平易とはいえ、新傾向の出題である。

【第4問】西洋近現代思想

 おおむね伝統を踏襲する出題であったが、やや新しい傾向も見出される。問1ではヒューマニズム・プロテスタンティズム・カトリシズム・ピューリタニズムが併置されてその理解が問われ、ロヨラの名について初めて問われた。問5ではミルについて、「内的制裁」の語を用いずにその理解を必要とする選択肢が出た。またリード文でも触れられ問8の読解問題で出てきたホネットは、近年注目の高まっている哲学者だが、センター試験では初めて出題された。

新高3生へのアドバイス 倫理

◆共通テスト対策もやるべきことはセンター試験と変わらない

 皆さんは共通テストを受験する最初の世代ということで、不安も大きいことでしょう。けれども、学習指導要領は変わりませんから、出題内容そのものが変わるということはありません。したがって、受験勉強としてやるべきことは、センター試験と基本的に変わりません。受験生としては、これまでのセンター試験を受けるつもりで、センター試験の過去問に取り組むことが基本となるでしょう。ただし、もちろん出題形式が変わってくる面はありますので、その対策としては、2018年に行われた共通テスト試行調査の問題をよく研究してみるといいでしょう。

◆倫理で必要なのは深い内容理解

 「思想家の名前を覚えられません」といった相談を受けることがありますが、こうした相談者は、明らかに倫理を暗記科目だと勘違いしているのでしょう。倫理はけっして暗記科目ではありません。過去のセンター試験をざっと眺めてもらえればすぐにわかるはずですが、そこでは人名とキーワードが結びついているなどの断片的な知識だけで解ける単純な設問は圧倒的に少数です。それぞれの思想家がどんな問題意識でどんな課題に取り組み、どんな分析や方向性を提案したのかが深く問われているのです。思想家の名前を暗記できないなどとこぼしているようでは、倫理攻略の入り口にも立っていないと言わなければなりません。まずは学校の教科書を腰をすえてじっくり読みましょう。それから用語集をこまめに引きながら、一つ一つの言葉の意味を確実に押さえてください。

◆問題演習で実戦を重ねる

 自分ではいちおう理解したつもりなのに、いざ問題を解く段階になると、選択肢の正誤がうまく判定できないという受験生の声を毎年聞きます。そうした受験生はセンター試験の過去問演習が不足しているはずです。センター試験では(おそらく共通テストでも)、思想理解におけるありがちな誤解が中心になって誤文がつくられています。したがって、そうした「誤解」をつぶすためには、実際の過去問にあたって、誤文の誤文たるゆえんをひとつひとつ理解していく作業が大切になります。その点では、年間6回実施される東進の共通テスト本番レベル模試は、年間のカリキュラムで共通テストと同一レベル・同一形式の問題演習を繰り返します。定期的な受験により、自らの学習到達度を測る物差しともなります。積極的に受験して、ライバルに差をつけてください。

新高2生へのアドバイス

◆思考力重視の大学入学共通テスト

 いよいよ来年の2021年から大学入学共通テストが始まります。皆さんはこれを受験する第2回めの世代ということになります。2018年に実施された試行調査では、思想の本質的な理解を問う問題、具体的事例を用いて考えさせる問題、現代社会の知識を問われる問題、文章や図表の読解問題と、出題形式もバラエティに富んでいました。難解な現代思想分野からの出題も予想されますので、単なる暗記科目のつもりでいると、高得点は望めません。ただし、重箱の隅をつつくような悪問が出題されることは考えにくいので、基本事項をきちんと理解していれば確実に得点を重ねることができるでしょう。2年生のうちから教科書をじっくりと読んで、思想の大きな流れをつかんでおきましょう。

◆倫理は「私」について考える科目です

 倫理は、「青年期」「源流思想」「日本思想」「西洋近現代思想」「現代社会」の5つの分野からなります。「倫理」というと思想や宗教のことと思いがちですが、「青年期」「現代社会」から自我形成や社会的な諸問題なども出題されます。

これは、<〈今ここに生きる私〉を総合的に捉えてほしい>というメッセージであると受け取れます。哲学も宗教が人生と深く関わっていることは言うまでもありません。「私とは何か」、「私たちの社会とはいかなるものか」、こういった問題について先哲たちは深く考察してきました。倫理には、単に試験科目であるというにとどまらず、大人になる前に考えてほしい内容が詰まっています。

◆2年後の受験に向けて

 2年生のうちには、「倫理」を受験科目として意識しすぎないほうがいいでしょう。まだ自分でいろいろと考える習慣を身につけてほしい時期です。鷲田清一『じぶん・この不思議な存在』(講談社現代新書)・池田晶子『14歳からの哲学』(トランスビュー)といった、若者向けに書かれた本を読むことをお勧めします。そうしたことが土台となり、受験向けの勉強に必ず生きてきます。とはいえ、少しずつ受験に向けた意識を高めておくことも有効です。年間6回実施される東進の共通テスト本番レベル模試は、試行調査を軸に本番の出題を想定して作成されています。定期的な受験により、自らの学習到達度を測る物差しにもなるので、積極的に受験して、ライバルに差をつけてください。(東進ハイスクール提供)