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第61次南極地域観測隊員・白山栄さん

 努力すれば何とかなる。そう言い聞かせて生きてきた。大学教員という肩書もあった。でも、何かが違っていた。「自分はどう生きたいのか」。30代半ばで仕事を辞め、1年余り、考えるチャンスを手にした。南極で――。

 昨年12月、南極に向かう観測船「しらせ」は氷河沖にたどり着き、地球の海面上昇のカギとなる氷床の流失の調査を始めた。「観測がうまくいった」と船上で報告する研究者たち。それを「ロマンを感じるな」と見つめる乗組員がいた。

 白山栄さん(35)。少し前まで自身も研究者。金属製錬を専門とする東京大学の助教だった。

拡大する写真・図版昭和基地に到着し、笑顔を見せる白山栄さん=2020年1月7日、中山由美撮影

 昨年、観測隊員に転身した。1年2カ月の間、昭和基地で暮らしながら、現地の気候や大気の組成を調べる観測装置のメンテナンスを任されている。

 石川県野々市市出身。歯科技工士の父は簡単な鋳造もこなしていた。得意科目は英語だったが、「理系って格好良いな」と漠然とした憧れがあった。勉強は努力できるタイプ。「苦手でも頑張れば何とかなるという『修行僧マインド』を持っていた」

 東京大の修士課程を修了して大手メーカーに就職。3年働くと、自由な空気が懐かしくて再び大学に。廃棄物から希少金属をリサイクルする技術を研究した。リチウムイオン電池の再生産など将来性が期待される分野だった。

 ただ、研究生活に身を置くと、苦しさも芽生えた。熱心に打ち込んでも、新しいアイデアを思いつくのに苦労する。「何十年も興味を突き詰める先生たちと比べると飽きっぽい。器用貧乏なんですね。何でもかじってみるのは好きだけど、研究者に向かないのでは」

 もちろん、家族を養うために働く人は企業にも、大学にもいる。「職業として割り切ろう」。産業規模が大きな鉄鋼製錬の分野の研究にも手を広げ、2015年に助教に就任した。

 だが、任期の中で成果を出すことや学生を指導する責任は重かった。「限界だ」。17年末、上司に転身を相談し、ほどなく、辞職を申し出た。

 南極と出合ったのは、その直後…

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