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 今回は、中年以上の男性の「おしっこの悩み」の原因となる前立腺肥大症についてお話しします。

 男性には、前立腺という生殖に関係する男性特有の臓器があります。前立腺は膀胱(ぼうこう)の下にあり、前立腺の中を尿道(前立腺部尿道)が通っています。前立腺は通常20グラムくらいの大きさですが、加齢とともに大きくなる傾向があります。

 特に尿道側に肥大すると前立腺部尿道が狭くなるため、尿の勢いの低下や、尿が出始めるまでの時間がかかるなどの排尿症状が現れることがあります。前立腺肥大の症状が続くと膀胱の構造や神経が変化し、何回もおしっこに行きたくなる頻尿や、尿意が抑えられず漏らしてしまう切迫性尿失禁などの蓄尿症状が現れることもあります。

 この排尿症状と蓄尿症状を合わせて下部尿路症状と言い、生活の質を著しく低下させます。前立腺肥大症がひどくなると、全く尿が出なくなる尿閉になってしまい、緊急的な処置が必要になることもあります。

 このような下部尿路症状を自覚し、困っている方は泌尿器科を受診してください。泌尿器科医はまず、問診、身体診察、超音波検査などを行い、症状の重症度や前立腺のサイズをチェックします。前立腺肥大症の症状の裏に前立腺がんが隠れていることがあるので、がんを除外する検査をすることがあります。

 たいていの場合、前立腺肥大症に対してはまず薬を用いた治療を行います。排尿症状を改善させる薬には、前立腺部尿道を広げるα1受容体拮抗(きっこう)薬、前立腺を小さくする5α還元酵素阻害剤、膀胱や前立腺の血流を改善させるホスホジエステラーゼ5阻害剤などがあります。場合によっては数種類を組み合わせて治療します。これらの薬で蓄尿症状が良くなることが多いのですが、抗コリン薬やβ3刺激薬など、頻尿を改善する薬を追加することもあります。

 しかし、これらの薬で治療しても症状が改善しないこともあります。特に尿閉になるといったん良くなっても繰り返してしまうことがあります。こんな場合には手術を検討します。

内視鏡で手術

 前立腺肥大症の手術は「大きくなった前立腺を削って尿の通り道を広げる」というもので、様々な方法があります。日本では、経尿道的前立腺切除術(TURP)、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)、光選択的前立腺蒸散術(PVP)などが行われています。いずれも、麻酔をして内視鏡を尿道に挿入して行う手術です。

 このうち、TURPは輪状の電気メスで前立腺を削る、最も普及している手術法です。しかし、サイズが大きい前立腺では時間がかかり、出血も多くなります。また削り残しによる再発もあります。

 これに対し、HoLEPやPVPはレーザーを使う手術で出血量を少なくできる手術法とされています。特にHoLEPは大きいサイズの前立腺でも少ない出血で削り残しなく切除できる方法です。以前は、100グラムを超える巨大な前立腺の手術は開腹で行うこともありましたが、HoLEPでも対応可能になってきています。欠点としては、術後の尿失禁がやや多いことです。

 どの手術法も利点と欠点があるため、患者さんの症状と状態に応じて最適な方法を決定します。おしっこに悩みを抱えている男性は、気軽に近くの泌尿器科を受診して相談してみてください。(弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座助教 岡本哲平)