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 国連の特別報告者は22日、米アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏の携帯電話へのハッキングにサウジアラビアのムハンマド皇太子が関与した可能性を指摘する報道声明を発表した。「重大な懸念」を表明し、米国や関係する機関による迅速な捜査が必要だとの認識を示した。

 声明は、ベゾス氏が調査を依頼したとみられる専門家の報告書をもとにしている。これによると、ベゾス氏の携帯電話がハッキングされ、情報が流出したのは皇太子と連絡先を交換した約1カ月後の2018年5月。ベゾス氏が同月、皇太子から動画ファイルを受け取った数時間以内に携帯電話から大量のデータが流出し始めた。サウジ当局が過去に使用してきたスパイソフトが使用されたとみられるという。

 ベゾス氏は昨年1月に20年以上連れ添った妻との離婚を表明。トランプ政権に近いとされる米タブロイド紙が、別の女性との愛人関係を暴露し、写真などを掲載していた。ベゾス氏はタブロイド紙側から脅迫を受けたことを表明。専門家を雇って、情報が漏れた流れや動機などについて調査していた。

 一方、ベゾス氏の携帯電話には18年11月と19年2月にも皇太子からメッセージが届き、公にされていないベゾス氏の個人情報も含まれていたという。特別報告者は「(今回の問題は)これまで広く報道されてきた反体制派や政敵に対する皇太子の役割と一致している」と指摘した。

 ベゾス氏と皇太子は、かつてはアマゾンがサウジにデータセンター設置を計画するなど良好な関係にあった。ただ、ベゾス氏は米紙ワシントン・ポストを所有。サウジ人記者ジャマル・カショギ氏が同紙にサウジ政府に批判的な寄稿を度々していた。カショギ氏が18年10月に殺害されると、同紙は皇太子の責任を厳しく追及していた。ベゾス氏は19年2月の声明で「(同紙の)報道によって、私を敵だと勘違いする権力者がいるのは避けられない」と述べていた。

 ロイター通信によると、サウジのファイサル外相は22日、「皇太子がベゾス氏の携帯電話をハッキングしたなどという考えは、完全にばかげている」と述べて全面的に報道を否定した。(ドバイ=高野裕介)