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【アピタル+】患者を生きる・職場で「バセドウ病」

 体の代謝をつかさどる甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう「バセドウ病」。病気に気付くきっかけは、汗のかきやすさや息切れ、手指のふるえや体重の急減などさまざまです。甲状腺の病気の専門病院である伊藤病院(東京都渋谷区)の外科医長・宇留野隆さん(48)に、病気について聞きました。

拡大する写真・図版伊藤病院外科医長の宇留野隆さん

 ――バセドウ病は、どんな病気ですか。

 のど元にある甲状腺という臓器が腫れて、ここから出る甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。通常、脳から分泌される甲状腺刺激ホルモンによる刺激で、甲状腺ホルモンの分泌を調整しています。ところが、この刺激スイッチを押す別のたんぱく質が作られてしまう病気がバセドウ病です。自己免疫システムに異常が生じて起こると考えられていますが、発病のメカニズムは完全には分かっていません。甲状腺は通常15~20グラム程度の重さですが、患者さんの中には200~300グラムの大きさまで腫れる方もいます。

 ――患者さんの性別、年齢層に特徴はありますか。

 男女比は1:5~10と、女性に多い病気です。人口1千人あたり、5人とされています。20~40代と比較的若い世代に多い病気ですが、高齢の患者さんもいます。

 ――主な症状はどのようなものですか。

 甲状腺が腫れるので、首の腫れに気づいて病院にかかる例が多いです。甲状腺の腫れに加え、頻脈、眼球の突出がバセドウ病の代表的な症状として「メルセブルグ(Merseburg)の三徴」という呼ばれます。ですが、全ての症状がそろうケースばかりではありません。微熱が続く、動悸(どうき)や不整脈、体重の急減、息切れ、手指のふるえ、汗のかきやすさ、生理不順、倦怠(けんたい)感や疲れやすさが出る場合があります。これらの症状は甲状腺ホルモンが過剰に出て、体の代謝が活発になることに起因します。

 ――治療はどのような方法がありますか。

 大きく三つあり、服薬、放射線治療、手術による甲状腺の摘出です。

 薬物治療は、過剰になっている甲状腺ホルモンの分泌を抑える治療です。この薬は肝機能や白血球の一種が減るなどの重い副作用がありますので、服薬開始後からの数カ月は2週間ごとに採血検査で副作用をチェックする必要があります。病状が落ち着いてくれば、通院は数カ月に一度ほどの通院間隔になります。内服薬による治療は、薬をのまなくても大丈夫な状態になることを「寛解」と呼びます。寛解まで最短でも2年程度はかかり、長くかかる患者さんでは5~10年かかる方もいます。

 放射線治療は、甲状腺がホルモンを作り出す時にヨウ素を原料としていることを利用します。放射性ヨウ素が甲状腺に集まることを利用し、放射性ヨウ素のカプセルを内服して意図的に甲状腺の働きを低下させる治療です。

 甲状腺の腫れが大きい方、服薬や放射線治療が効かない方、長期間の治療を望まない方には手術による甲状腺の摘出があります。首の皮膚を開いて、甲状腺を摘出するのが古典的な方法です。甲状腺を臓器ごと摘出するので、生涯にわたって甲状腺ホルモン剤をのむことが必要になります。

治療選択の注意点

 ――治療方法を選ぶ際の注意点はありますか。

 ほとんどの患者さんが、まずは甲状腺の働きを抑える内服薬で治療を始めます。ただ、長く治療期間がかかること、また寛解になっても再発するリスクは伴います。

 放射線治療は、放射性物質を体内に取り込むので、妊娠や授乳中の方は適応外で、治療から1年間は避妊が必要になります。近い将来に妊娠を望まれる方には向きません。また、18歳以下の患者さんも適応外です。

 手術は、術中の出血や周辺にある声帯を動かす神経への影響などリスクを伴います。甲状腺ホルモン値が高く、不整脈など脈拍がコントロールされていない状態で手術をおこなえば、全身麻酔や手術の影響で命に関わる重篤な状態に陥ります。また、甲状腺を摘出するので生涯にわたってホルモン剤をのんで、薬で甲状腺ホルモンを摂取しなければなりません。甲状腺機能を低下させるには手術は最も確実な方法ではありますが、リスクも伴います。主治医としっかり話をして、決めることが大切です。

 連載「患者を生きる」は原則、平日は毎日配信します。ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・職場で>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・川原千夏子)