拡大する写真・図版冬場でもにぎわうほうせき箱の店内=2019年12月22日、奈良市のほうせき箱、根本晃撮影

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 店に入ると暖かい。室温は25度ほど。かき氷を食べるにはうってつけだ。もちいどのセンター街のかき氷店「Kakigori ほうせき箱」は冬場もにぎわっている。

 「大人の抹茶DXでございます」

拡大する写真・図版人気メニューの「ティラミス風大人の抹茶DX」(税込み1320円)=2019年12月11日、奈良市のほうせき箱、根本晃撮影

 店主の岡田桂子さん(47)が削ったふわふわの氷に、純白のクリームのようなものが乗っている。これが「エスプーマ」。牛乳やヨーグルトなどにガスを加え、泡状にしたものだ。ひとくち食べたお客さんから笑顔がこぼれた。

拡大する写真・図版岡田桂子さん=2019年12月11日、奈良市のほうせき箱、根本晃撮影

 共に店主を務める平井宗助さん(48)が説明する。「エスプーマはガスで膨らませているので胸焼けしない。インパクトある見た目とやさしい味を両立できるんです」

 ほうせき箱のかき氷は、ならまちを代表するスイーツになり、老若男女の観光客を引きつけている。

拡大する写真・図版平井宗助さん=2019年12月11日、奈良市のほうせき箱、根本晃撮影

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 平井さんは吉野町で生まれ、奈良市で育った。慶応大学を卒業し、東京のホテルに就職。結婚を機に奈良に戻り、26歳で家業の食品会社を継いだ。2011年から6年間、社長を務めた。

 12年、もちいどのセンター街にほど近いカフェ「おちゃのこ」でかき氷を食べた。県産のいちごや大和茶も使っていた。

 「これは素晴らしい! 県産のフルーツに、ふわふわの氷。めっちゃおいしい。こんなものが奈良にあるなんてすごすぎる。すぐに自分でもやってみたいと思いました」

拡大する写真・図版店頭に立つ平井宗助さん=2019年12月11日、奈良市のほうせき箱、根本晃撮影

 そのかき氷を作ったのが、岡田さん。平井さんとは奈良の食文化をテーマにした観光ツアーを企画する勉強会で知り合った。

 大阪府寝屋川市出身。呉服店や銀行などを経て、07年におちゃのこの前身、台湾茶専門店「おちゃっちゃ」を起業した。子どもの頃からかき氷好き。自己流で削氷を学び、お茶のシロップをかけて出すと人気に。

拡大する写真・図版かき氷をつくる岡田桂子さん(左)=2020年1月10日、奈良市のほうせき箱、根本晃撮影

 2人は14年夏、奈良市の氷室神社と友人たちの協力を得て、氷室神社でかき氷の祭典「ひむろしらゆき祭」を開いた。台風の中、2日で3千人が訪れたことに感動した。以来、毎年開催されている。

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 平井さんがかき氷の専門店を開きたいと思っていた折、岡田さんがおちゃのこを辞めた。14年の冬、平井さんはほうせき箱を開くと決めた。頭にあったのは、2人が尊敬する東京のかき氷店。エスプーマがかかっていた。店の許可を得て、ほうせき箱でも挑戦することに。

 岡田さんは削氷には慣れていたが、エスプーマは初めて。ガスを加えた後に振りすぎると固くなり、足りないとやわらかすぎる。「答えが見えない日々が続いた」と岡田さん。連日深夜まで試行錯誤を重ねた。

 15年3月、ほうせき箱が誕生した。奈良の方言で「おやつ」という意味の「ほうせき」にかけて、宝石箱のように世界中のお客さんの笑顔が輝く場所にしたいとの願いを込めた。

 当初は1日に10杯ぐらいしか売り上げがない日も。それでも、おちゃのこのかき氷ファンがやって来たり、かき氷イベントで岡田さんに注目した雑誌やテレビも取り上げたり。

拡大する写真・図版インスタグラムでハッシュタグ(検索ワード)「#ほうせき箱」と検索すると約3万件もの投稿が表示される

 2カ月後には入店待ちの列ができるようになり、今では、遠くから来る人のためにホテルの宿泊とかき氷のセットプランもある。

 世界中の観光客がほうせき箱のかき氷に驚く。今年は、ドイツで現地の料理人に向けてかき氷づくりのワークショップを開く予定だ。平井さんは「日本のかき氷が世界でどんな進化を遂げるかわくわくしている。海を越えて、この喜びを共有したい」。(根本晃)