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 第92回選抜高校野球大会の出場校が24日に決まる。戦力、戦績以外の特色も評価される「21世紀枠」では3校が選ばれる。今年も「文武両道」を目指したり、専門分野を野球の練習にも生かしたりと色とりどりの9校が候補に名を連ねた。大会は3月13日に組み合わせ抽選があり、19日に阪神甲子園球場で開幕する。

 三重県の近畿大学工業高等専門学校(近大高専)は、「高専初の甲子園」を合言葉に、吉報を待つ。部員たちは、将来のエンジニアを目指し、文武両道を掲げる。

拡大する写真・図版守備練習をする近大高専の選手たち。「高専初の甲子園」の吉報を待つ=三重県名張市

 「授業は8限まであってびっくり。眠くなることもあるけれど、勉強についていこうと」。右腕から最速140キロの直球を投げ、左打席では高校通算16本塁打という大黒柱、白石晃大外野手(2年)は言う。

 高専は5年制。2年生は週3日、8限まで授業がある。平日の放課後、1、2年生が一斉に練習を始められるのは週1日しかない。週2日は4、5年生の野球部がグラウンドを使うため、ボールを使わないトレーニングが中心になる。

拡大する写真・図版選手との対話を大切にする近大高専の重阪俊英監督

 就任2年目の重阪俊英監督(37)は、「大学のような雰囲気だけれど、まだ高校生の年代。『時間を守ろう』と繰り返してきた」と振り返る。平日は学年別の集合時間を守らせ、週末は連係プレーの強化に力を注ぐ。「勉強の力をつけないと、就職に影響する」とテスト期間は練習を早めに切り上げ、勉学に集中させてきた。

 野球部は1~3年生が高校の大会に、4、5年生が高専の大会に出場。1、2年の部員60人のうち、約半分は大阪や奈良など他県出身。54人が寮で暮らす。

 右翼手のレギュラー、木伏彪(きぶしひょう)外野手(2年)は東京出身。高専を出て道路の建設に携わる父にあこがれ、全国の高専の中から選んだ。「甲子園に行きたいし、僕も大きいものを作りたい」と都市環境コースに進むつもりだ。

拡大する写真・図版守備練習をする近大高専の選手たち=三重県名張市

拡大する写真・図版トレーニングをする近大高専の選手たち。「高専初の甲子園」の吉報を待つ

 高専は、5年間で167単位以上を取得する。テストの「赤点」は60点未満とハードルが高く、毎年、1学年に5人ほどが留年する。赤点を取ると、追試や課題のリポート提出が待つ。合格点を目指し、勉強に励む。

 二塁手のレギュラー、古田光内野手(2年)の寮の部屋にはテスト前、「教えて」と言って次々と部員がやってくる。「勉強は難しいけれど、教えることで理解が深まる」。仲間と深夜まで机に向かってきた。重阪監督は「赤点を取ったことのない部員は1人だけ。でも、苦労しながら、単位を取ってきた」とたたえる。

 そんな野球部を保護者も応援する。エースナンバーを背負う箕延(みのべ)寛人投手(2年)の母、厚子さん(48)は、「高校野球の後の人生の方がずっと長い。勉強も野球もしっかりやる学校を探していた」と言う。

 昨秋の県大会は、準々決勝で優勝候補のいなべ総合を延長13回タイブレークの末、3―2で下し、自信をつけた。準決勝の三重戦は、定期テスト初日と重なった。接戦を制した後、学校に戻ってテストを受験。4日後の決勝は津商に2―0で勝ち、初優勝を果たした。東海大会初戦の準々決勝で、加藤学園(静岡)に敗れたが、終盤に追いつく粘りをみせた。

拡大する写真・図版ノックを打つ近大高専の選手たち

 主将の田島大輔内野手(2年)は、「勉強も野球も一生懸命やってきたから、粘り強く戦えるようになった」と言う。(木村健一)

高等専門学校(高専)とは

 技術者の養成を目指し、高度経済成長期の1962年に創設された。中学卒業の学生を受け入れる原則5年制の高等教育機関。卒業時に「準学士」の称号が与えられる。全国に国公私立合わせて57校あり、約5万4千人が学ぶ。

 近大高専は62年、三重県熊野市に近大の併設校、熊野高等専門学校として開校した。2000年には現校名に変更。11年、同県名張市へ移転した。生徒数は全校で871人。卒業後は75%が就職、25%が大学に編入する。

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拡大する写真・図版帯広農の選手が、雪の積もったグラウンドで一塁まで駆ける

拡大する写真・図版練習の合間にきなこ牛乳を飲む帯広農の選手

 21世紀枠候補のなかで、帯広農(北海道)は独特の飲み物「きなこ牛乳」で体力強化に取り組む。

 練習中のたんぱく質摂取のためによく飲まれるプロテインの代わりに、学校の敷地内で農業科の生徒が栽培した大豆をひいたきなこを使う。牛乳も校内で搾られた「帯広農産」だ。前田康晴監督(43)は「市販のものでもいいですが、せっかくなので農業高らしさを出したかった。以前、私は倶知安(くっちゃん)農の監督だったときに和牛の革を使ってグローブをつくったことがあります」とほほえむ。中軸を打つ水上流暢(はるのぶ)外野手(2年)は「砂糖も入れておいしいですよ。腹持ちもいい」と気に入っている。

拡大する写真・図版練習の合間にきなこ牛乳をつくる帯広農の選手

 昨秋は打線好調で北海道大会準決勝まで進んだ。選抜出場を信じて、例年より1カ月早く雪上でのノックや打撃練習に励んでいる。 ほかには、台風19号の被害を受けながら昨秋の東北大会で8強入りした磐城(福島)、高いレベルでの文武両道に取り組む宇都宮(栃木)、少ない練習時間を補うためチームぐるみで自宅での自主練習に取り組む敦賀(福井)、雪が多い地域で活動する伊香(いか)(滋賀)、野球普及に取り組んで中国地区から2年連続で推薦された平田(島根)、限られた練習環境で着実に成長してきた城東(徳島)、廃校の危機を乗り越えた本部(もとぶ)(沖縄)が候補校となっている。(坂名信行)

拡大する写真・図版雪が積もったグラウンドで打撃練習をする帯広農の選手