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 ばんえい競馬(北海道帯広市)は、世界でただ一つの形態の競馬だ。馬が重りをのせた鉄ソリ(重さ最大で1トン)を引いて力とスピードを競う。1月、ホクショウマサル(牡9歳、坂本東一厩舎(きゅうしゃ))が30連勝を達成し、地方・中央競馬の記録を塗り替えた。一時は病気療養でレースから2年ほど遠ざかっていたが、一昨年7月の復帰レースから勝ち星を重ねた。強さの秘密はどこにあるのか。

阿部騎手「こんな馬、二度と出会えない」 病気で一時は引退の危機も

 1月6日、帯広競馬場第11レース。30連勝の記録がかかるこの日、ホクショウマサルは出走9頭の中で、オッズ単勝1・0倍をつけ、圧倒的人気を集めた。

 コースは直線200メートル。台形上の二つの山(障害)を乗り越えなければならない。ホクショウマサルはスタート直後、やや出遅れたが、最初の低い山(第1障害)を越えた中盤に、先頭集団に追いついた。

 だが、この日はそう簡単ではなかった。2番人気の実力馬・ハクタイホウ(牡(おす)9歳)が終始リードを守り、いち早く二つ目の高い山(第2障害)を越えて、ゴール目前に迫った。

 ここからホクショウマサルは粘りを見せる。2番手で第2障害を越えて、ラスト64メートル、駆け足を見せた。ゴール寸前、ハクタイホウを追い抜き、差しきった。

 手綱を握った阿部武臣騎手(47)は「あの最後の駆け足こそがホクショウマサルの強さ。力のない馬なら、最後の最後であんなことは出来ない。実力があるからこその連勝記録。こんな馬、二度と出会えないと思う」と話す。

 坂本東一調教師も「もともと体が大きく、力があった。自分から『前に進もう』とする気持ちが強い。ふつう、連勝は途切れるが、30連勝できたことは奇跡だと思う」とたたえる。

 ホクショウマサルに、特別な調教を施してはいない。ふだん世話をしている阿部騎手は「力がある馬でも、体調を上げたままにして維持し続けるのは難しい。いかに馬のちょっとした変化を感じて、どういうケアをするか、見極めが大切」と愛を語った。

 ホクショウマサルの歩みは、平坦(へいたん)ではなかった。

 2013年5月にデビューし、「イレネー記念」「ばんえいダービー」など、それぞれ世代最高峰を決める二つの重賞レースで勝つ実力馬だった。

 しかし、16年から2年ほど「のど鳴り」と呼ばれる病気でレースから遠ざかった。気道が狭まり、呼吸が十分に出来なくなる病気で、引退に追い込まれる可能性もあった。

 このとき、当時の馬主・井内昭夫さん(故人)の決断がホクショウマサルの運命を決めた。手術することにしたのだ。成功するとは限らなかったが、「父はホクショウマサルの素質を信じていた。引退は考えていなかった」と息子の亨さん(38)は振り返る。

 無事手術を終え、北海道由仁町の牧場で静養に入った。18年3月、井内さんは、自らホクショウマサルを坂本厩舎に連れて行き、「この馬だけは頼みます」と託した。この数日後、井内さんは急死してしまう。

 この年7月の復帰レースでは、最下位クラスに転落した。だが、その後は、地力の違いを見せて、勝ち星を重ねてきた。昨年12月には、最高位の「オープン」クラスに復帰。実力馬たちと、しのぎを削る中で、30連勝を勝ちとった。亨さんは「父の思いがホクショウマサルに伝わっているのかもしれません」と話す。

 周囲の期待は高まるばかりだ。坂本調教師は言う。

 「まだまだ、力がある馬。体調管理を万全にし、どこまで記録が伸ばせるかやってみたい」

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