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 「桜を見る会」問題、カジノを含む統合型リゾート(IR)汚職事件、辞任2閣僚らの公職選挙法違反疑惑などで揺れる序盤の通常国会――。自民党が防戦に追われる場面が目立っているが、そのダメージは連立与党の公明党にとってひとごとではない。24日の参院本会議で代表質問に立った同党の山口那津男代表は、何を語ったのか。

 山口氏は年明けから全国各地の年賀会に出席し、「疑惑を招かない誠実な政権運営に努めなくてはならない」などと繰り返してきた。その姿からは、安倍政権の「ブレーキ役」を演じようとの思いがにじんだ。しかし、この日の安倍晋三首相に対する質問では一連の疑惑に触れず、政権への注文を完全に封印した。

拡大する写真・図版参院本会議で、公明党の山口那津男代表(手前)の代表質問を聞く安倍晋三首相(後方右端)=2020年1月24日午前10時44分、岩下毅撮影

「封印」の意味 公明幹部「山口さんなりの『忖度』だろう」

 前日の衆院本会議は違った。公明党は斉藤鉄夫幹事長が質問に立ち、安倍首相の政権運営にクギを刺した。「長期政権の緩みやおごりを排し、謙虚さと誠実さをもって国民の信頼回復に努めるべきだ」。斉藤氏は直後の記者会見でも「全国を巡ると『与党が緩んでいる』との指摘を受ける。公明党がいる限り決して許さない」と語っていた。

 それなのに、党代表の山口氏は「疑惑」に触れず、政権運営に苦言も呈さなかったのはなぜか。

 党幹部の一人は山口氏の胸の内をこう解説した。「党のトップ2人がそろって批判したら、倒閣運動になってしまう。前日の幹事長発言を踏まえた山口さんなりの『忖度(そんたく)』だろう」

 山口氏はまた、代表質問で首相肝いりの憲法改正問題にも言及しなかった。これまで折に触れて「(改憲の)優先度は高い方ではない」などと述べてクギを刺してきたが、肩すかし感もあった。

 なぜか。その理由について、代表質問後の記者会見で山口氏は「与野党がきちんと議論できる環境を整えて、衆参の憲法審査会で議論が深められる。そういう道筋が大事だ。当然のことだから、あえて触れるまでもない」と説明した。

真っ赤なネクタイ、込められた意味は・・・

 では、山口氏はこの日の代表質問で何を訴えたかったのか。「政権のブレーキ役」ではなく、「外交」で存在感を発揮しようと決めていたようだ。

 真っ赤なネクタイをしめて登壇する直前、周囲に「(米国の)トランプ大統領に見えるかな? (中国の)習近平(シーチンピン)国家主席に見えるかな?」とおどけてみせていた。そして質問では北朝鮮問題や日中・日韓関係に加え、「ミャンマー情勢」を取り上げて独自色を出そうと腐心した。「公平で客観的な姿勢で、ミャンマーの取り組みを支えていただきたい」と首相に求めたのだ。

拡大する写真・図版参院本会議で代表質問に立つ、公明党の山口那津男代表=2020年1月24日午前10時17分、岩下毅撮影

 伏線は昨年末にさかのぼる。山口氏はミャンマーを訪問。少数派イスラム教徒ロヒンギャへの集団殺害(ジェノサイド)を否定するアウンサンスーチー国家顧問から、私邸に招待された。欧米諸国が同国政府の姿勢を批判する中、スーチー氏から「ミャンマーの実情、姿勢は公平な目で見守ってもらいたい」と理解を求められていた。

「極めて重要な答弁」 対ミャンマー外交でやりとり

 伝統的な親日国のミャンマーは、公明党の創設者・池田大作氏の兄が戦死した地でもある。そのため、池田氏が名誉会長を務め、平和主義を掲げる同党の支持母体・創価学会にとっても、大事な場所のひとつだ。

 山口氏のそんな質問に対し、首相は「ミャンマーの安定と発展に向けた取り組みを官民あげて力強く支援してまいります」と答弁した。山口氏はその後の記者会見で、満足そうにこう語った。「極めて重要な答弁だ。ミャンマーを孤立化に追い込むのではなく、支えて国際社会の仲間入りをさせていくという総理の決意だ」

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 第201回通常国会。国会や政党など政治の現場での様子を「政治ひとコマ」としてお届けします。(大久保貴裕)