皇居内の吹上御苑で毎年開催されている自然観察会。普段は立ち入れない場所で、豊かな植物と触れあえる貴重な機会だが、近年、参加希望者が減少している。元々は上皇ご夫妻の意向を受けて始まったイベントで、宮内庁は「ぜひ多くの人に関心を持って欲しい」と呼びかけている。

 吹上御苑は皇居西側に広がるおよそ25万平方メートルの地域。シイ、カシなどのうっそうとした林や、小さな湿地、梅林などが点在している。江戸時代の明暦の大火(1657年)以降、火よけのための庭園として整備され、第2次世界大戦後は昭和天皇の意向で、農薬を使わないなど自然のままに管理されてきた。

 この吹上御苑を中心に、国立科学博物館が1996年から皇居内の生物調査を実施。計5903種もの動植物がいることが判明した。自然観察会は、こうした自然を国民と分かち合いたいという上皇ご夫妻(当時は天皇、皇后両陛下)のお気持ちを踏まえ、2007年度に始まった。

 当初は、①中学生以上の幅広い年代②70歳以上のお年寄り③小学4~6年生――と対象者を分けて参加者を募り、毎年、3回ずつ実施してきた。各回の定員は30人ほどで、専門家の解説を聞きながら1時間から1時間40分かけて散策。多年草「ヒキノカサ」など多数の絶滅危惧種、ブナ科の高木スダジイの板根など、多様な植物を観察できると好評で、上皇ご夫妻がその場に現れる「サプライズ」が起きたこともあった。

 だが、応募は徐々に減少。初年度は①が329倍、②が95倍だった倍率は、昨年度はそれぞれ4倍、5倍と急落した。宮内庁は、毎年のイベントとして定着して希少性が薄れたことや、代替わり関連の皇室ニュースなどに注目が集まり、十分に周知されなかったことなどが要因とみる。③については当初から応募者数が少なく、「無断で保護者が申し込み、子ども本人がつまらなさそうにしている様子が見受けられるようになった」(同庁の担当者)こともあり、16年度を最後に打ち切られた。

 応募者数が減ることは当選しやすくなったとも言えるが、一方で、同庁の担当者は「定員割れに近づけばリピーターの方ばかりになってしまい、広く様々な人に皇居の自然に触れてもらうという趣旨にそぐわなくなる」と危機感を募らせている。

 今年の観察会は4月26日(同日時点で70歳以上が対象)と、みどりの日にあたる5月4日(中学生以上が対象)。応募は郵送のみ受け付ける。往復はがきに住所、氏名などを記載し、いずれも2月21日(当日消印有効)までに〒100・0001、日本郵便宮内庁内郵便局留め、管理課自然観察会担当あてに郵送する。同庁は「幅広い世代が応募しやすいスタイル」として往復はがきで受け付けてきたが、今後はメールやウェブでの受付についても検討するという。詳細はテレホンサービス(03・3284・6780)か、同庁ホームページ。(中田絢子