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 水産資源を守りつつ、豊かな食文化を次世代に引き継ごうという取り組みに、日本のトップシェフらが動き出した。特別な認証を得た「サステナブル・シーフード」などを料理に使う一方、客にも資源保護の取り組みをシェフ自らが説明することで、漁業者と消費者の双方の意識を高めていく考えだ。

 「大西洋のクロマグロは(漁業規制で)数が復活してきているんです」

 今月中旬、東京都渋谷区のミシュラン一つ星のレストラン「シンシア」で、石井真介シェフ(43)が客に言葉をかけていた。提供した料理は、資源保護の意識が高い漁師がとった大西洋のマグロに根セロリを合わせたものだ。

 「こんなにおいしいものを食べ続けるために『ちゃんと管理された食材を選ばないと』とお客様に思ってほしい」と、主に初めて来店した人に説明している。

 石井さんとシェフ仲間らは3年前に「シェフス・フォー・ザ・ブルー」を立ち上げ、水産資源を守りながら使う活動をしている。乱獲などの影響で、大きめの魚が入手しづらくなったことに危機感を持ったことがきっかけ。今では東京の三つ星レストラン「カンテサンス」の岸田周三シェフ(45)ら気鋭の若手ら28人が所属している。

 国際機関が持続可能な形でとった魚介類を認証する「サステナブル・シーフード」は、まだ国産の魚の量や種類が少なく、日本のシェフやすし職人らが使うには十分とは言えない。石井さんらは認証がなくても持続的な漁業を行う生産者から独自に仕入れるルートづくりなどにも取り組む。組織の代表理事でフードジャーナリストの佐々木ひろこさん(48)は「トップシェフは影響力が大きいインフルエンサー。消費者の意識を変えて、水産資源を守りながら食べ続けられるようにしていきたい」と話す。

 重鎮シェフらも意識を高めようとしている。世界の高級ホテルやレストランでつくる美食のための組織「ルレ・エ・シャトー」の日本支部は昨年10月、水産資源の保護のための管理計画を重視するなど6項目の行動指針を大阪市内で発表した。

 パリにある本部は2014年に水産資源保護のビジョンを発表し、クロマグロや産卵期のスズキをメニューから外すことなどを求めてきた。約20のホテルや料理店が加盟する日本支部は多様な食文化を背景に同調してこなかったが、「日本周辺海域の水産資源50種のうち、約5割が危機的状況にある」(ルレ・エ・シャトー)という現実が背中を押した。

 山口浩・支部副会長(59)=神戸北野ホテル総支配人・総料理長=は「我々も持続可能性の議論を後回しにしてきた。漁業者にも『必要な魚だけとる一本釣りや生け締めにすれば商品価値も上がる』といった前向きな説明をしていきたい」と話す。(金本有加)

《ルレ・エ・シャトー日本支部の海洋保護に向けた行動指針》

●科学的な管理計画や、専門機関を交えて改善計画を立てている漁業者から、適切な価格で仕入れる

●地域に根ざした伝統的・小規模な漁業者から、地魚や旬の魚介類を買う

●違法や過剰な漁業をする生産者と問題解決に向けた対話を続け、改善を支援する

●子孫を残した経験のある成魚を優先的に使う。買った水産物は無駄遣いをなくす

●お客や将来シェフを目指す若者に、水産資源の問題や、その解決に向けた取り組みを伝える

●専門家を招いて勉強会を開き、自分たちの魚介類の買い方が生態系に与える影響を分析し、改善する