拡大する写真・図版国内で日本人の感染が初めて確認されたことを受け、会見する厚生労働省の担当者=東京・霞が関

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 新型コロナウイルスのヒトからヒトへの二次感染が28日、国内で初めて確認された。発生地の中国・武漢市(湖北省)への滞在歴のないバス運転手の男性が、感染していた。世界的に感染が拡大する中で「想定された事態」としつつ、国内ですでに感染が広まっている可能性を指摘する専門家もいる。

バス内で長時間接触か

 奈良県の会見は午後7時半から始まった。会見に臨んだ県の鶴田真也・医療政策局長によると、男性が武漢市からのツアー客を乗せたのは2回。今月8~11日(乗客31人)と、12~16日(乗客29人)。男性は8日からのツアーではマスクは着用していなかったが、12日からのツアーでは着用していたという。

拡大する写真・図版武漢への渡航歴がない60代男性の感染の経過

 こうした状況を踏まえ、鶴田局長は「長い時間バスに乗っており、バスが県内に立ち寄った時間は短い」と説明。「長時間同じ空間にいたため、感染したと考えられる。奈良県内で感染したとは考えにくい」と語った。その上で「過剰に心配することなく、手洗いなどインフルエンザと同様の感染対策をお願いしたい」と話した。

 また、男性と2メートル以内で接触した家族や医療関係者らは「濃厚接触者」として経過観察中だとしている。バスツアーにはそれぞれ、別のバスガイドがそれぞれ同乗していたが、県が調べたところ、今のところ症状は見られないという。

 一方、濃厚接触者のいる都道府県とは情報共有しているが、県は28日までにバスが巡ったルートについては公表しておらず、バスが立ち寄った自治体にも情報提供していない。運転手の感染が確定したことから、今後関係自治体に必要に応じて情報提供するという。

「国内で感染拡大起こる可能性」

 「武漢に渡航歴があったり、肺炎患者に濃厚接触していたりしたケースだったこれまでの国内発生例とは大きく違う」

 厚生労働省の担当者は28日夜の会見でこう述べた。これまで、厚労省が医師から患者の報告を受けるのは、肺炎症状があり、かつ武漢市への滞在歴や、発熱などの症状がある武漢市の滞在者との接触がある場合だった。今回のケースはいずれにもあたらないとして、厚労省は専門家の意見を聴きながら早急に状況把握のやり方を見直すとしている。

 専門家は今回の事態をどう受け止めているのか。

 東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は「運転手の男性は、バスの中にいた患者から感染したと考えられる。二次感染は武漢市以外に北京や上海、ベトナムでも起きており、想定されていたこと。ただ、男性からさらに他の人に感染が広がっていた場合は、国内で感染拡大が起こる可能性がある」とする。

 東北大の押谷仁教授(ウイルス学)は、中国では軽症例から感染した例も報告されていることから、「国内での二次感染は他にもあり、すでに感染が拡大している可能性も考えなくてはいけない」とする。

 世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を見送った理由には、その時点で二次感染が中国国内での限定的な発生にとどまっていたことがある。「今後、WHOが緊急会合を再び開き、緊急事態にあたるとの判断をするかもしれない」とする。

 中国当局の説明では、新型肺炎は、感染初期は症状が軽い人が多く、潜伏期間中に他の人に感染する可能性もあるとしている。河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)は「厳密にはまだわからないが、中国での状況をみると、症状が出ない感染者(不顕性感染者)や症状の軽い感染者が比較的、多いのではないか」と話す。

 一方、北海道大の人獣共通感染症リサーチセンターの喜田宏・特別招聘(しょうへい)教授によると、動物から感染したばかりのウイルスは、ヒトが免疫をもっていないため伝わりやすい面がある。ただ、軽症のうちはウイルスは体内でそれほど増えないため、別の人にうつす力は取りたてて高いわけではないという。「しっかりした対策をすれば、爆発的に感染が広がる可能性は高くないのではないか」とみる。

 元WHO西太平洋地域事務局長の尾身茂・地域医療機能推進機構理事長は「この先、国内で流行を招かないためには、三次感染、四次感染を防ぐことが重要だ。そのためには、感染者への濃厚接触者のモニターを徹底的に行うべきだ」と話す。

この後、厚労省の会見内容を一問一答形式で詳報します。

■厚労省の会見、主なや…

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