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 約10年前、一人の男性教員(当時32)が自ら命を絶ちました。その姉(44)は、勤務先でのストレスによる過労自殺で「公務災害」(労災)にあたると考えましたが、証明するには膨大な証言集めが必要でした。仕事を辞め、弟の人間関係をたどり、調べ上げた姉の10年間をたどりました。(榊原謙)

彼のために爪痕残したい

 和歌山県の県立高校の教諭だった九堀(くぼり)寛さんは、学生時代に野球に打ち込み、高校でも野球部の部長や監督を担った。2009年初夏、連日遅くまで部活動に付き合う寛さんに、姉の瀬川祥子さんがこう声を掛けた。「好きでなったんやさかい、辛抱さんせ」

拡大する写真・図版九堀寛さんが使っていたグラブ=和歌山県日高川町、榊原謙撮影

 冗談めかした言葉に、寛さんは怒って言い返してきた。

 「姉ちゃんに何が分かるんや」

 同10月、寛さんは命を絶った。悲しみと混乱が残った。

 遺品からは野球部の活動記録のノートが出てきた。寛さんの字でこう書かれていた。

 「A(部員の生徒の実名)の保護者から脅迫の電話」

拡大する写真・図版九堀寛さんが帰宅後に残務処理をしていた部屋=和歌山県日高川町、榊原謙撮影

 部で何があり、弟は何を抱えていたのか――。瀬川さんは周囲の後押しもあり、公務災害の認定請求を決意した。「どうせ通らない」と言う人もいたが、まじめに働いた弟が勝手に死んだと思われるのは耐えがたかった。「たとえ結果がダメでも、彼の名誉のために爪痕は残したい」

「自分は探偵」言い聞かせ

 請求にあたっては、勤務実態を把握し、本人を追い詰めるトラブルがなかったかを調べる必要がある。つてをたどり、同僚や友人、他校の野球部の監督ら関わりのあった人に会い、証言を集めた。

 「本人が気ままやからこんなこ…

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